メイフェア編 自分の力じゃ変えようのないこと
ああそうだ。<飛び抜けた才能>を才能と感じるかどうか自体、人それぞれだ。例えば漫画や小説を生み出す才能を持っていても、それを高く評価する者としない者が現にいるよな。
俺だって、密を刃を伏を鷹をそれぞれ愛してきたつもりだが、光を灯を人間として自立できるまで育ててきたつもりだが、それを評価するどころか強く非難するのだっているだろう。
そのこと自体、もちろん気分は良くないが、面と向かって言われたりすれば腹も立つが、<価値観の違い>というのはどう足掻いたって現に存在するという事実を認めればこそ『まあ仕方ないさ』と割り切れもするんだ。割り切ろうとも思えるんだ。そうじゃなきゃ<自分の力じゃ変えようのないこと>で苛々し続けなきゃならなくなるだろ?
そんな無駄なことにリソースを割くのは不毛すぎる。非生産的すぎる。そんなことにリソースを費やしていられるほど人生ってのは長くない。老化抑制処置のおかげで健康寿命が二百年を超えた地球人にとっても人生は有限なんだ。だったらもっと有意義なことにリソースを振り分けるべきなんじゃないか? 少なくとも俺はそう思うんだよ。俺にとってはそうなんだよ。だから俺はそれを心掛ける。そうあろうと自分に言い聞かせる。言い聞かせることができる。
俺のことを快く思わない人間に煩わされる時間を惜しいと思える。俺が<健康>でいられるのもあと三十年ばかり。健康寿命そのものが六十年とかだった頃なら半分ほど残ってるわけだが、二百年のうちの三十年ってことだと六分の一にも満たない年数なわけで。
だったら余計にそんなことにかかずらってる場合じゃないよな。
新のことはおそらく死ぬまで引きずるのは分かっていても、それだけに囚われていたら誉達のことが疎かになってしまう。そんなのは俺自身が嫌なんだ。許せないんだ。
飲み込めきれないことをいくつも抱えつつも生きていくのが人生ってもんだしな。
その事実をわきまえてれば無駄に右往左往することも減るんじゃないか? とは思う。
そのこと自体が<俺の個人的な価値観>でしかなくても構わない。俺の人生を生きているのはあくまで俺自身だ。他の誰かじゃない。俺自身がどうするかというのが大事なんだよ。
別に誰かに危害を加えたり不利益を与えたりするつもりもない。飲み込みきれないことを抱えつつその中でなんとか納得のいく人生を送ろうと考えているだけだ。
だからこそ他人の価値観に振り回されすぎても上手くはいかないさ。




