メイフェア編 普通じゃない者
そんな形でメイフェアの存在は、<誉の群れ>の、いや、現在では<轟の群れ>か、の一部となっていた。決して<仲間>ではないものの、
<群れを構成する要素>
そのものになっていたんだ。これはまさしく、
<人間とロボットのあるべき姿>
とも感じるな。もちろんあくまで、
<現状におけるそれ>
ではありつつ、理想的な形を自然と形成してくれていると思う。と同時に、どんなことでも<例外>はあって、<旭音>がそれだな。彼女は明らかにメイフェアのことを、
<自分と同じパパニアン>
として接しているんだろう。一時的にメイフェアに懐いているような振る舞いを見せていた他の子供達は成長と共に『自分達とは違う』と気付いてある程度の距離を置くようになるのが、旭音にはなかったということか。
さりとて、<例外>というもの自体が実は、
<あって当然のもの>
だから、白眼視されたりはしたとしても、
『存在そのものを認めない』
というのは『現実を見ていない』以外の何ものでもないのもまた事実。他の群れでは<イジメの標的>にもなるであろうことは事実なんだが、言葉で表現するのはどうにも難しいが、実は、
<野生ならではの認め方>
でもあるような気がしてるんだよな。地球人社会ほどのキャパシティがないがゆえに<例外的な存在そのもの>を養っていけるだけの余裕はないのも事実なんだが、地球人社会における<嫌悪感>とはまた違うもののような印象もあるんだ。
こうして<野生に生きる者達>を間近で見てきたからこそ。
『何か違う』
って感じてしまうんだ。
ただ、<誉の群れ(轟の群れ)>の場合は、どちらかと言えば地球人社会寄りの対応がされてるんだとも言えるか。旭音は群れの中でイジメられるわけでもなく、しかし<異端>であると認識されてると言うか。他の仲間達は明らかに旭音を、
『普通じゃない』
として距離を置いてるのが分かる。
『迫害されるわけでも虐げられるわけでもなくただ<普通じゃない者>としてそこに存在できてる』
とでも言うべきか。
『なんとも絶妙なバランスを保ってる印象がある』
とでも言えばいいのか。
旭音自身も自分の立ち位置を承知してるみたいだしな。承知して受け入れてるみたいだしな。
まあそれが成立してること自体が、
<メイフェアがもたらす余裕>
そのものの為せる業なんだろう。彼女がこの群れに安寧をもたらしてくれているから生まれる余裕なのも確かだし。
旭音のような存在を使って自分達のストレスを解消しなくても成り立ってるという意味で。




