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イレーネvsラミア(完全にロボ対怪獣だな)

イレーネはロボットだ。だから『恐れる』ということがない。自分に不利な状況であっても、たとえ自分が破壊されるのが分かっていても。


あくまでも『人間を守る』ということに反しない限り、ロボットは言われたことに従い、それを疑問にも思わない。


AIやロボットが人間に牙を剥くことを避ける為にそうしたんだ。


まさにその通りに彼女はヒト蛇(ラミア)に向かっていく。一瞬もためらうことなく。足を引きずりながらも草原を走り、左手にナイフを握り締め。


しかも、ヒト蛇(ラミア)の方も、まるで恐れることなく自らに突っ込んでくる小さな<動物>を警戒さえせずに向かってくる。


人間部分だけでもイレーネよりも二回り以上大きくなり、おそらく全長も大きくなってるであろう巨体にも拘らず、人間である俺の目では追い切れない動きで迫った。月明かりしかない深夜の草原に火花が散り、キィィィンッ!という、およそ片方が生物とは思えない金属音が響く。一体、何が起こってるというんだ。


ここから先はまた、ドローンに捉えられた映像を改めて見直した時に分かった状況で説明していく。


自分に襲い掛かろうとするヒト蛇(ラミア)に向けてイレーネがナイフの切っ先を奔らせ、それをヒト蛇(ラミア)が腕の鱗で受けたんだ。その一合でナイフの刃は欠け、使い物にならなくなったらしい。


イレーネはそれを躊躇うことなく放り出し、ヒト蛇(ラミア)の腕を取る。関節を極めて捻じ伏せようとしたようだ。だがそれもヒト蛇(ラミア)は振り払う。


いくら右手が義手で十分な力が発揮できないとはいえ、片手でもおそらくオオカミ竜(オオカミ)くらいなら難なく捻じ伏せる筈なのに、それを振り払うとか、力も尋常じゃないぞ。


義足の右足では踏ん張れずに滑ってバランスを崩したイレーネに、ヒト蛇(ラミア)の右手の爪が襲い掛かる。


イレーネもそれを受け止めるものの、やっぱり踏ん張りが利かずに弾き飛ばされた。


爪そのものの強度もタングステン並みのようだ。対人ライフル弾程度なら破れない要人警護仕様のメイトギアの人工皮膚には通じなかったところを見ると、おそらく威力としてはその程度か。しかしヒト蛇(ラミア)の一撃を受け止めた際に計測された衝撃は、その数値を見たシモーヌが、


「これ、時速六十キロの自動車に撥ねられた時のと殆ど同じですよ…!」


と青い顔をしながら呟くほどだった。なんだそれ。


下手な受け止め方をすると、関節部が歪んでしまう程の衝撃だということか。


見た目だけじゃなくそのパワーも完全に<怪獣>だな。


正直、右手と右脚のハンデがあるイレーネだと厳しい相手だぞ。


せめて、メイフェアがいる時だったら……!



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