閑話休題 メイフェアXN12Aの願い その1
メイフェアXN12Aはメイトギアである。それも、セシリアやイレーネと同じく<惑星探査チーム・コーネリアス>に配備されたメイトギアだった。
しかも彼女は、当時試みられていた、
『ロボットに人間と同じ感情や心を付与する』
という<実験>のサンプルとしても運用されていたメイトギアの一体である。
しかしさすがに<惑星探査>という危険な任務に同行するロボットでそのような実験をするというのもどうかと思われるが、どのようなことでも<黎明期>というものはえてして手探り状態だったりするのもあってか、客観的に考えてみれば不合理に思えるような考えであろうとも取り入れられたりする事例が多いのも事実だろう。その時点では有用だと信じられていたのが、
『後から考えてみれば無理があった。おかしかった』
というのもよくある話なわけで。
ゆえにメイフェアもごくごく当たり前のこととして試験運用の一環として惑星探査の任に就く流れになったのである。
それに、実際に人間のように感情に囚われて理不尽な行為に及んでしまったりしないようにセーフティは施されてもいた。
そんなセーフティが存在する時点で実際には<感情>も<心>も機能していないとも言えるだろうが。
本当にただの、
<机上の空論による安易なシミュレーション>
であった。事実、それらは芳しい成果が得られなかったようで、
『ロボットに感情や心を実装する』
という試みは、記録だけが残されただけで実際にそれらがロボットに反映されることはなかった。むしろ、
『やはりロボットに感情や心を持たせるのは問題が多い』
という結論に至り、一部の記録を残して多くが抹消されたと言われている。その抹消された記録の中には重大な悲劇が含まれているとも。
それが公になれば<AI・ロボット排斥主義者>らを強く刺激し、テロを誘発するとさえ危惧されていたそうだ。
メイフェアらの場合は、惑星探査の任務中は大きなトラブルもなかった。そもそもチームのメンバーが、全長二百メートル程度という宇宙船としては決して大きい部類に入るわけではない限られた空間の中で共同生活を行いながら惑星探査という危険な任務に就くために極めて厳選された者達であったことも幸いしたのだろう。
二十世紀から二十世紀にかけて地球で運用されていた原子力空母なども乗組員の心理的負担に考慮し、数ヶ月に一度は寄港し上陸できる機会を与えていたという。
しかし惑星探査となればそうはいかない。気軽に地球に帰還することもできないのだから。




