焔と彩編 エピローグ
こうして新がその生涯を閉じたが、焔と彩はそれにすら関心を示すことなく二人揃って穏やかな日々を変わらず過ごしていた。
人間(地球人)はそういうのについていろいろ思うかもしれないが、そんなものは所詮、
<地球人のエゴ>
に過ぎない。それを焔や彩に向けることを俺は認めないし許さない。個人的に表に出さず頭の中で思ってるだけなら好きにすればいいし、内心にまでは干渉できないけどな。
なにより実の親である俺が納得してるんだ。赤の他人が余計な口出しをするのは<野暮>以外の何ものでもないさ。
その焔と彩も、遠からず命の幕を下ろすだろう。これは避けようのない結末だ。大事なのはその結末に向けて当人がどう生きるかであって、
<他の誰かにとって都合のいい生き方>
なんてのは必須じゃないんだ。地球人社会じゃえてしてそれに振り回れるのが多かったが、だからこそつらく苦しい人生を送ることになった者も少なくなかったが、ここではそういうのはなるべく回避していきたいと思う。そんな生き方をしたところで喜ぶのは他者の人生を娯楽のように捉える無責任な奴らだけだしな。
陽と和と麗のための新居も数日中には完成するだろう。そのための作業を、陽と和も積極的に手伝ってくれてる。エレクシアやイレーネやドーベルマンDK-aに比べればその働きは<誤差の範囲>に過ぎないが、二人して屋根や壁の塗装を行ってる様子は楽しそうだ。
しかも麗も二人の真似をしてたり。こちらはそれこそむしろ邪魔にしかなっていなかったりするものの、別にいいさ。エレクシアやイレーネがいればそのフォローもたやすい。
いずれにせよ、陽と和と麗の新しい生活がすでに始まっていると言えるだろうな。
俺やシモーヌを<第一世代>とすれば、孫にあたる陽や和や麗は<第三世代>ではあるが、野生として生きる走や凱や凛達<第二世代>にもすでに孫である<第四世代>が当たり前にいて、しかもそう遠くないうちに<第五世代>も生まれてくることになるだろう。そうなればいよいよ光や灯や錬慈を除いた<第二世代>は退場していくことになる。
明が逝き、深が逝き、丈が逝き、翔が逝き、走が逝き、凛が逝き、新が逝き、残すは誉と焔と凱と彩と彗だけとなった。俺の子供達ももう三分の二が逝ったわけだ。そしてそのまた残りの半分以上が、おそらくこの数年以内に逝く。
<命>ってヤツは本当に残酷で無常だよな。
でも俺は、自分がこうして生まれてきたことを悔やんではいないし、子供達に生まれてきてもらったことも後悔していない。
ただただその事実と向き合った上で命を楽しむようにしてるからな。




