表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2441/2987

焔と彩編 これ自体が彼の

(あらた)とエレクシアを乗せたハチ子は、発揮可能な最大のパフォーマンスを見せてくれた。普段は安全マージンを考えて出さないようにしている速度で飛行してくれたんだ。それはまあ乗っているのがエレクシアだから万が一のことがあっても対処できるのが分かっているのもあってのものだけどな。


その間も、エレクシアは(あらた)の生命維持装置として働いてくれていた。


それに意味があるかどうかなんて彼女は気にしない。そんなものを気にする<心>を彼女は持たない。俺がそうしてほしいと望んでいるならその通りにするだけだ。


こうして俺達の集落に到着すると、光莉(ひかり)号の上にハチ子が着陸。すぐさまエレクシアは(あらた)を抱いて医務室へと駆け込み、準備してあった治療カプセルに彼を収容してくれた。


だが……


治療カプセルによる診断は、


<死亡>


すでに脳の崩壊が始まっていて手の施しようがなかったんだ。そもそも、マンティアンに食らいつかれた時に頚椎まで破壊されていて、即死状態だったんだよ……


「くそ……!」


治療カプセルの中に横たわる<息子>の姿を見下ろしながら、俺はつい声を上げてしまっていた。たまらない無力感と憤りが同時に溢れてくるのが分かる。


どうしてこうなってしまったのか……


ここまで、(しん)を、(めい)を、(しょう)を、(じょう)を、(そう)を、(りん)を、見送ってきた。(きたる)も見送った。だがそれはあくまで、


『命を全うした』


と思える形のものだった。子供達だけじゃなく、(ひそか)も、(じん)も、(ふく)も、(よう)もそうだった。


だからいつしか俺は、


『俺の家族についてはちゃんと寿命を迎えられる』


ものだと思い込んでいたんだ。だがそんなのは何の根拠もない<ただの妄想>にすぎない。<願望>にすぎない。<世界>というものは本質的に残酷で冷酷なものだ。人間の感覚ではそう認識されてしまうものだ。


分かっていた。分かっていたはずなのに……


錬是(れんぜ)……」


シモーヌが支えてくれなければ、俺はその場に座り込んでしまっていたかもしれない。


もちろん(あらた)に残された時間も本当に残り少なかっただろう。もしかしたら今夜にも彼の心臓が鼓動を刻むのをやめてしまってたとしても何もおかしくなかったと思う。それを考えればこれ自体が彼の<寿命>だったと言えなくもないかもしれない。


それに、以前にも触れたように、<親世代>は<子世代>が生きるための<糧>となるのが<礎>となるのが<自然の摂理>というもののはずだ。


それは分かってる。頭では理性では分かってるが、感情が納得してくれない。


それこそが<人間>ってもんだろうさ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ