焔と彩編 これ自体が彼の
新とエレクシアを乗せたハチ子は、発揮可能な最大のパフォーマンスを見せてくれた。普段は安全マージンを考えて出さないようにしている速度で飛行してくれたんだ。それはまあ乗っているのがエレクシアだから万が一のことがあっても対処できるのが分かっているのもあってのものだけどな。
その間も、エレクシアは新の生命維持装置として働いてくれていた。
それに意味があるかどうかなんて彼女は気にしない。そんなものを気にする<心>を彼女は持たない。俺がそうしてほしいと望んでいるならその通りにするだけだ。
こうして俺達の集落に到着すると、光莉号の上にハチ子が着陸。すぐさまエレクシアは新を抱いて医務室へと駆け込み、準備してあった治療カプセルに彼を収容してくれた。
だが……
治療カプセルによる診断は、
<死亡>
すでに脳の崩壊が始まっていて手の施しようがなかったんだ。そもそも、マンティアンに食らいつかれた時に頚椎まで破壊されていて、即死状態だったんだよ……
「くそ……!」
治療カプセルの中に横たわる<息子>の姿を見下ろしながら、俺はつい声を上げてしまっていた。たまらない無力感と憤りが同時に溢れてくるのが分かる。
どうしてこうなってしまったのか……
ここまで、深を、明を、翔を、丈を、走を、凛を、見送ってきた。來も見送った。だがそれはあくまで、
『命を全うした』
と思える形のものだった。子供達だけじゃなく、密も、刃も、伏も、鷹もそうだった。
だからいつしか俺は、
『俺の家族についてはちゃんと寿命を迎えられる』
ものだと思い込んでいたんだ。だがそんなのは何の根拠もない<ただの妄想>にすぎない。<願望>にすぎない。<世界>というものは本質的に残酷で冷酷なものだ。人間の感覚ではそう認識されてしまうものだ。
分かっていた。分かっていたはずなのに……
「錬是……」
シモーヌが支えてくれなければ、俺はその場に座り込んでしまっていたかもしれない。
もちろん新に残された時間も本当に残り少なかっただろう。もしかしたら今夜にも彼の心臓が鼓動を刻むのをやめてしまってたとしても何もおかしくなかったと思う。それを考えればこれ自体が彼の<寿命>だったと言えなくもないかもしれない。
それに、以前にも触れたように、<親世代>は<子世代>が生きるための<糧>となるのが<礎>となるのが<自然の摂理>というもののはずだ。
それは分かってる。頭では理性では分かってるが、感情が納得してくれない。
それこそが<人間>ってもんだろうさ。




