焔と彩編 人間の言葉を使えるだけの獣
人間(地球人)はだいたい似通った、個々人で多少違ってはいても根本的な部分にはそこまで異質でもないメンタリティを持ってるから、言葉さえ通じれば話し合いによって互いの落としどころを見付けられる可能性があるが、根本的な部分のメンタリティが完全に異なっている相手にはそれは通じない。
<人間の言葉を使えるだけの獣>
を相手に、
『話し合いで落し所を見付ける』
なんてのが通用するとは俺も思わないさ。となれば言葉すら通じない相手の場合には<リスク>を実感してもらう。
『ここにくるのはヤバい』
と感じてもらう。
だが、マンティアンの方ももちろん一筋縄ではいかない。
<命の危険があるリスク>
なんてもの自体が野生の獣にとっては日常そのものだ。
『敢えてそのリスクを犯すからこそ生き延びられる』
のが『野生で生きる』ということでもあるさ。あくまで、
『リスクの度合いによって判断する』
だけだろう。となれば、
<引き下がった方がいいリスク>
を示さなきゃいけない。それを示してこそ引き下がってくれる。
問題は、ホビットMk-Ⅱらがそれを示せるかどうかということなんだが、冷静に今のホビットMk-Ⅱの性能を勘案すれば十分に可能なはずなんだよな。
そしてそれを証明するかのように、二機のホビットMk-Ⅱはマンティアンを翻弄して見せてくれた。
カマの攻撃だけでなく頭突きや蹴りも受けたんだが、装甲を兼ねた外装によって大きなダメージにはならなかった。
外装が少し変形したり傷が付いたりしたものの、機能には支障のない程度だったからな。まあ、生身の獣が今のホビットMk-Ⅱの外装に『傷を付ける』こと自体が大変なことではある。人間(地球人)だと傷を付けること自体ほぼできないわけで。
改めてマンティアンの凄さを感じつつも、それを確実に圧倒するホビットMk-Ⅱが頼もしい。地道にデータ収集を行いそれに基づいてブラッシュアップ。バージョンアップを繰り返してきた成果が表れてるよ。
そんなホビットMk-Ⅱらによってマンティアンは釘づけにされて、新達は安全に餌のところにまで向かうことができていた。ただ、場所そのものはかなり近かった。
「ひ……っ!?」
ルナがたまたまマンティアンの姿に気付いてしまえるくらいには。
獲物を狙うために気配を消しているマンティアンに気付けるほどの能力はルナにはなかったもののその一方で彼女も<非捕食者>だからこそ危険察知の能力は低くない。ないがゆえにマンティアンの姿に気付けてしまったんだろう。




