焔と彩編 こいつらがいる場所には
そうだ。普通の生き物には<固定武装>なんてものはないし、それを新たに装備することもできない。
人間の場合は<文明の利器>という形でそういうのを用意することはできても、何らかの形で<操作>する必要があるから、どうしてもそれによって反応がワンテンポ遅れる。
<脳波制御>や<電脳化による装備との直接リンク>などの方法で操作の手間を省くこともできるものの、実はそれさえ練習や訓練が必要なんだよな。何しろ元々人体に備わってなかった機能を使えるようにならなきゃいけないわけで。だから練習や訓練と言うよりは<リハビリ>と言った方がニュアンス的には近いらしい。
対してロボットは、<そういう仕様>として作れば、そのためのノウハウが元々あれば、装備した瞬間から完全に使いこなせる。
ドーベルマンシリーズやドライツェンシリーズやアリスシリーズやホビットシリーズを作った際にそれぞれ試験運用を行ってデータの蓄積を行ったりというのはあったが、それさえ<実働試験用の機体>がデータを集めてくれればそれ以降の機体にはデータを入力するだけで済む。<生き物>にはできないことだ。
その利点を惜しみなく利用する。<卑怯>だなんだと言うのもいたりするが、いやいや、むしろそこで最善を尽くそうとするからこそ被害を最小限に留めることもできるんだ。<力の差>があってこそ<手加減>もできるしな。
能力が拮抗してる状態で手加減しようなんてのは無謀だし、なにより『愚か』だと俺も思う。身の程知らずにもほどがある。
この点でもロボットならリスクは抑えられるのがとにかく大きい。加えて、ドーベルマンシリーズに比べても強度が劣ると言っても、ジュラルミンや高強度樹脂で作られたホビットMk-Ⅱの機体は、生身の体生物の力じゃそこまで簡単には壊せない。
マンティアンの力なら破損させることは不可能じゃないにしても、機能停止にまで追い込むことは非常に難しいだろうさ。一機を壊そうと躍起になればもう一機がその隙を突いてくる。事実上、マンティアン側としては対処のしようがないよな。
だからこそなるべく傷付けないように手加減もできると。
俺達からすれば家族や仲間の身を守れればそれでいいわけで、それ以上は望んでないし、穏当に共存していくには一方的な虐殺なんてのは悪手以外の何ものでもないだろ。
そんな俺の考えをホビットMk-Ⅱらは確実に実行してくれる。
『こいつらがいる場所には近付かない方がいい』
とマンティアンに思ってもらえるように。




