焔と彩編 ハレの日
そうして竜生に対応している一方で、光とセシリアには、別の仕事を任せている。
<陽と和と麗の結婚式の準備>
だ。
そうなんだよ。今日は三人の結婚式を予定しているんだ。走と釈と凛に最後の挨拶に行った後で、陽が和と麗をパートナーとして正式に受け入れると決断したのを受けて執り行うことにしたそれのな。
さすがに地球人社会でのもののように大層な式を行うわけじゃないにせよ、まあ俺とシモーヌの時のよりは<式>らしいものにしようと思ってる。そんなせっかくの<ハレの日>にこんな騒動が持ち上がるというのは残念ではあるものの、これまた何度も言うように人生ってのはこういうことの連続だ。<個人の都合>なんてものを考えちゃくれない。慮ってはくれない。
だったらこっちもそんなことをいちいち気にしている必要もないよな。自分達が必要と感じたことについては、万難を排してでも断行するまでだ。
別に誰かの不利益になるようなものでもない限りは。
それにやっぱり<喜ばしいこと><慶事>ってもんこそを優先したいじゃないか。<悲しいこと><残念なこと>ばかりを重視していたら、精神衛生上もよろしくないだろうさ。
だからどちらも疎かにはしない。それに十分、手分けしてできるしな。それが可能なようにしてきたしな。
<有事>についてはエレクシアとイレーネを柱に、<平時>についてはセシリアを柱に、共に手を尽くす。
これが大事だと俺は思う。
それでも、
「じいちゃん、大丈夫?」
陽が気を遣って尋ねてくる。和は光と一緒に準備を行ってるもののやはり気にしてたそうで、彼が代表して確認しに来たというわけだ。
が、俺は彼に、
「大丈夫だ。どっちも大事なことだから、陽も自分の役目を果たしてくれ」
と告げた。すると、
「分かった」
素直に承諾してくれた。地球人社会だとなにか大変なことがあったらそちらを重視して<自粛>することが<人として当たり前のこと><美徳>とされていたりもしただろうが、えてしてそれが行き過ぎて強引に抑え付けようみたいな動きにまで発展したこともあったよな。
俺個人としてはそういうのは違う気がするんだよ。
もちろん困ってる人のすぐ隣で陽気にパーティーを楽しむみたいなのもさすがに違うだろうとも思うものの、だからといって<喜ばしいこと><慶事>を疎かにするのもな。
見せつけるような形じゃなく離れたところであれば同時に行なってもいいんじゃないか? それにケチをつけるのも余計なお世話ってもんだろう。




