焔と彩編 継戦の意思
ホビットMk-Ⅱは包囲して波状攻撃を行い、ますらおはそんなホビットMk-Ⅱを手足として使って絶え間なく竜人に攻撃を仕掛けるものの、当の竜人の方は、自動小銃の弾丸は鱗で弾き返し、<対怪物用打撃銃>の鉄球は躱してみせていた。
そんな姿を見てるだけでも<ただの獣>じゃないことが分かる。本能だけでこの猛攻を凌ぐのはさすがに無理だろう。
しかも、画面越しの竜人の姿が青く光ったように見えた瞬間、画面にノイズが走り、ホビットMk-Ⅱらのステータス画面にエラー表示が。
それはすぐに消えたものの、一機が弾かれるように部品を撒き散らした。竜人の尻尾の一撃を食らったようだ。と同時に機能停止する。
十分な間合いを取っていたはずが、動きが乱れた瞬間に接近を許してしまったんだな。
「くそっ! やっぱりこいつもか!」
<電磁バースト>
だ。強力な電磁波を発生させて電子機器の機能を阻害する能力をこいつも備えていたんだよ。夷嶽や牙斬と同じく。
ドライツェンシリーズであるますらおは十分なシールドが施されていたからほとんど影響を受けなかったが、ますらおに施した電磁シールドを作れる材料がコーネリアス号に残されたストック分しかないから、ここで手に入る材料でほとんどを賄ってる時点でそれが難しいホビットMk-Ⅱには簡易なシールドしか施せていないんだ。だから、シールドの性能を超えた電磁波を受けるとモロに影響が出てしまう。
それでもまあできる限りの対策は施してるから、行動不能に陥ったりまではしないが、際どい戦いだとやはり致命的ではあるな。
ただ同時にここまでの印象として、やはり夷嶽や牙斬ほどの<激しさ>は感じない。<憎悪>を感じないんだ。
<怪物>でありながら人間への悪感情を持たない者もいるのか。
だとしたらこちらから攻撃を仕掛けたのは失敗だったかもしれないな。
とはいえ、アカトキツユ村に向かっている以上は<防衛>しないわけにもいかないしで、難しいところだ。それでも、今回のことも貴重なデータではある。
向こうに攻撃の意思がないのなら、継戦の意思がないのなら、なんとかお互いに手を引きたいところだな。
しかし竜人の方にしてみればますらおやホビットMk-Ⅱこそが<得体のしれない怪物>だろうし、その怪物に襲われてる状態だから、手を引くことはできないか。
となれば、ますらお達の方を下がらせる?
さりとてアカトキツユ村の方に下がらせると竜人が追撃してきた場合、招き入れることにもなりかねない。
どうしたものか。




