焔と彩編 異変
複雑な凹凸や障害物がある密林の中を、ホビットMk-Ⅱはただの不整地のように走ってみせる。
エレクシアには遠く及ばなくても、猪竜を振り切ることも可能な走りだ。そして今、猪山に追い付かれない速度で走っている。
ちなみにこの時、ますらおはどうしているかと言うと、<指揮役>として少し離れたところを同じように走っていた。
いや、正確にはホビットMk-Ⅱよりはずっと滑らかにだが。十分な強度を持ち、ゆえにホビットMk-Ⅱよりも強靭でありつつ軽量な脚を持つからこそ追従性も高いんだ。
そうなんだよ。ホビットMk-Ⅱからすれば二回りほど大きなドライツェンではあるものの<重量>の点では大した違いがない。それどころか、パーツ単位でみるとホビットMk-Ⅱよりも軽かったりもする。それが、
『コーネリアス号を構成している部材を転用した』
ことのメリットだ。量が限られているからこれ以上はもう増やせないにしても、ホビットMk-Ⅱを指揮する形で運用することには意味がある。そして今も、ますらおはホビットMk-Ⅱらとリンクして一体のロボットとして機能しているんだ。
これにより迅速で確実な作戦行動を行える。逐一命令を出さなければ動けない人間の軍隊とは違うんだ。だからこそより一層、踏み込んだ運用が行えたりもする。それは危険と引き換えにしてのものではあるものの、そのせいで今回もここまでにすでに二機のホビットMk-Ⅱが破壊されることになったものの、回収すれば修理か再資源化が可能だ。完全に失われてしまうわけじゃない。
そんなロボット達の働きにより、猪山は順調にアカトキツユ村から離れていった。
しかし、
「グフッッ! ゲフウッッ!!」
村から二キロほど離れたところで、猪山の走る速度が急激に落ちた。いや、その場に立ち止まってしまったんだ。そして、がっくりと膝を着いて、
「ゲ…ッ! ゲ……ッッ!!」
泡を吹きつつドズンと横倒しになった。
「猪山の体温が非常に上昇しています。脈拍も明らかに異常ですね」
ホビットMk-Ⅱやドローンが観測したデータを基にイレーネが告げてきた。
「体の構造がほぼ猪竜のままでありながら激しい運動をしたんだ。放熱が上手くいっていないんだろう。つまり猪山は<熱中症>を患っているんだよ」
これまたホビットMk-Ⅱやドローンが観測したデータを見ながらレックスがそう口にする。
「なるほど」
体が大きくなれば<体積>は増えるものの逆に<表面積>は体積が増えた分ほど増えるわけじゃない。だからこそゾウは大きな耳を使って放熱することで体温調節をおこなってるらしいと聞いたことがある。




