焔と彩編 大切な時間
『グンタイ竜の襲撃を受けた際、最終的に俺が本当に<取捨選択>を行ったとしたら、子供達はとっとと逃げていたかもしれない』
そう考えても、俺は別にショックを受けたりしない。むしろそうであってほしいと思う。それどころか、俺を助けるために子供達が犠牲になるとか考えるだけでもゾッとする。
こんなところに勝手に生まれてこさせておいてその上というのは普通に最低だろう。
と、俺は思うんだよ。もっとも、俺のこういう考えにさえ反発する人間(地球人)はいるだろうけどな。
それ自体、そういうものだと認識するようには心掛けてる。俺の考えに同調しない奴は存在価値がないみたいには言わないさ。
ただ、自分が助かるためなら子供を犠牲にしてもいいと考えてるような親は、子供からどう思われる? 恨まれたりしないか? 信頼してもらえるか? 尊敬してもらえるか? 自分はそんな親を信頼して尊敬できるか?
と思うだけなんだよ。
何より俺自身が、
『子供達を犠牲にして自分だけが助かってそれで嬉しいか?』
と考えてしまうだけなんだ。
嬉しくないよなあ。嬉しくない。そんなことになったら自分が許せない。自分自身を呪ってしまうだろうな。
それが分かるから、俺は自分ばかりを優先することはできない。そんなことをする気分にはなれない。
何よりも俺自身のために。俺自身の気持ちに正直になればこそ、いざという時にはロボットを使う。そのためにロボットには心を持たせていないんだからな。
心を持たせてしまったら、そっちはそっちで<道具>と割り切れなくなってしまう。現状では心がないと分かっていても、あまり気分は良くないぐらいだし。
ロボットでそれなんだからましてや自分の子供なんて、<人間(地球人)としての真っ当な感性>を持っていたら犠牲になんてできないだろう。
と、俺は思うわけだ。
そんな俺の想いなど知るよしもない焔と彩は、やや大義そうにしつつも、明らかな衰えを感じさせつつも、人間(地球人)の高齢者とは比較にならない軽快な動きで二人仲良く密林に入っていった。
食事をとりに行ったんだろうな。
腹が減ればメシを食い、眠くなれば眠り、気持ちが昂ぶれば睦み合う。
今でこそ睦み合うことはなくなったが、それでも互いを愛おしむように丁寧な毛繕いは欠かさず、淡々と穏やかに日々を過ごしている。
人間(地球人)はそういう毎日を『退屈だ』と評して毛嫌いするにしても、二人はそんなことを考えてもいないだろうな。
どんなに代わり映えしないように見えても、二人にとっては大切な時間なんだよ。




