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焔と彩編 正直悩ましい

朋群(ほうむ)人の多くは地球人よりもはるかに早熟で、それこそ満年齢で十歳になる前に<成体(おとな)>になってしまう』


この事実については、正直悩ましい。地球人の場合は十代半ばじゃ、妊娠出産自体は可能とはいえ体の方は完全に成熟しているとは言い難いだろう。


『妊娠出産が可能である』


ことと、


『人間として成熟している』


というのは一致しないさ。だからこそ今の地球人社会じゃ、


『三十歳くらいまでは<大人>とは言い難い』


という感覚が半ば常識になっていたんだろうな。


一応、


『成人年齢は十八歳』


としているところは多いものの、正直、実感とはかけ離れてると俺も感じてた。


だいたい、健康寿命が二百歳を超えてるってのに、それが前提になってる社会だってのに、その十分の一にも満たない時間で人間社会を理解できるとか、無理がないか? それって、健康寿命が六十歳程度だった社会で、


『六歳くらいでもう大人』


って言ってるようなもんだと思うんだがな。それはさすがに極端だとしても、俺自身も実年齢が三十歳の頃なんて、人間社会のことがおぼろげながらでも分かってきたという実感すらほとんどなかったよ。


はっきり言ってまだ<子供>だった。


そりゃそうだろう。一説には三百億の人間が暮らし、様々な環境で様々な生き方をしてる社会全体をたった三十年程度でどれだけ理解できると言うんだ? それこそ一生かけたって理解できる気がしない。精々、自分の行動範囲内の表面的な部分だけを『理解できたような気がする』感じになれるだけじゃないか?


それを考えればやっぱり、


『体の成熟=大人』


だとは言えない気しかしないな。だからこそ、確か以前も触れたように思うが、せめて十代後半くらいまでは<未成年>ということにしておこうと考えてる。<地球人社会>ほど複雑でなければそれだけ社会のことを理解するにも時間を要しないんじゃないかとは思う。


まあ、<野生の獣人>の場合はそれこそこっちの都合なんか知ったことじゃないだろうから、余計な手出し口出しはしないように心掛けなきゃなとは思いつつだが。


そもそも野生の獣人達は一切合切が<自己責任>の中で生きてるからな。失敗しても誰も庇ってくれないし助けてもくれない。だがその分、<社会>はシンプルだ。<明文化された法>が存在しないのはもちろんのこと、それ以外の<ルール>や<マナー>や<なんとなくの常識>みたいなものすら人間社会に比べればないも同然だ。


だから覚えなきゃいけないこともずっと少ない。



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