焔と彩編 それを絶対と称することは
『愛し続けたいという気持ちは間違いなくあるものの、それを絶対と称することはできない』
これは事実だと思う。俺自身の場合もそうだし、実際にむしろそれが<普通>だろう。本当に<永遠の愛>なんてものを貫き通せた事例なんて、自分の周りを見回してもそんなに当たり前にあるか? なんだかんだと文句を口にしつつ不満を感じつつ、メリットとデメリットを天秤に掛けて『別れない』というのを選択してるだけという事例が大半だったりしないか?
まあ俺だって密や刃や伏や鷹に体して何一つ不満がなかったわけじゃないし、今だってシモーヌに対しても、
『もうちょっとこうしてもらえたらな』
という点がまったくないかと言えばそれは嘘になる。彼女は、
『自分にとって関心あることが目の前にくると周りが見えなくなる』
ところがあって、そんな時に錬慈に話し掛けられてもつい無視してしまう<癖>があるんだ。
もちろんそれはずっと以前から分かってたことで、それを理由に嫌ったりするつもりもないものの、少しモヤッとしてしまったりすることがあるのはまぎれもない事実ではある。
その事実は事実として、それも込みで彼女を愛してるというだけなんだよな。愛せてるというだけなんだよ。
ただ、将来的にそこが大きくなってしまうことが有り得ないか?と言われたら、『絶対にない!』とは断言できないだけで。
そして、実際に<噛み合わない部分>が大きくなってしまったのが新と凛ってことだよな。
別にどっちも悪気があったわけじゃないし、どっちが正しくてどっちが間違ってるということでもないと思う。あくまでも、
『ただ噛み合わなかった』
というだけだ。
だから<永遠の愛>なんてものをありがたがるような考え方を推奨する気もないんだ。自然発生的にそういうのが生じてしまうのは仕方ないとしても、俺の方から意図的にそういう考えを持つように促すつもりはない。
現実にはほとんど実在しないものについてさも『待って当然』『それを持たないのはおかしい』的な認識を作り出すのは、厄介事の素だろう。
それがなきゃ結婚式で<永遠の愛>を誓っておいてすぐに別れることに対して冷ややかな目を向けたり 揶揄したりなんてこともなくなるしな。
そもそも衆人環視の下でそんなことを誓わされるというのが不愉快だろ。最高潮に盛り上がっている時に勢いで言うのならまだしも、冷静な状態でそれを言わされるというのは、もはや屈辱的ですらあるんじゃないか?
少なくとも俺もシモーヌも、<結婚式>でそんなことを誓うつもりもなかったぞ。




