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焔と彩編 嫌いという感情の方を

改めて言うが、だからって俺は<近親婚>を肯定したいわけじゃないんだ。リスクを考えると避けた方がいいだろうしな。


この場合の<リスク>というのは、


<遺伝上の異常が発生するリスク>


だけじゃない。それと同等以上に重大なリスクとして、


<立場を悪用して強引に関係を迫られるリスク>


を想定してる。年長の子供がその立場を利用して弟妹に関係を迫ったりするのももちろん、


『親が子供に』


というのは本当に忌まわしいと俺も思う。そんなことはあってほしくない。


近親婚を是認すれば、親としての優位な立場を笠に着て自分の子供を性的に服従させようとするようなのが増長するかもしれないというのが恐ろしいんだ。


何度も言うように、お互いに想い合ってるだけなら無理に引き裂くようなこともしたくない。ないが、


『想い合ってるように見せかけて実際には一方的に従わせてる』


なんてのも俺は看過するつもりはないんだよ。だからこそ、(ほむら)(さい)(あらた)(りん)のことも慎重に見守ってたんだしな。


だが、それはまったくの杞憂だった。(ほむら)達はただただ惹かれ合ってただけだ。


その気持ちそのものは俺には理解できない。妹の光莉(ひかり)のことは大切にも想ってたが、そこに<恋愛感情>のようなものはまったくなかったわけで。


人間の場合は、<親愛の情>や<畏敬の念>を<恋愛感情>と誤認してしまうことはそれほど珍しくもないらしいが、野生に生きる者は基本的にもっと直感的だろうからな。


『好きなら好き。嫌いなら嫌い』


ではっきりしてると思う。だからこそ分かりやすかったし。


なのに人間の場合は『好き』と『嫌い』が同時に存在しうるしなあ。


でもまあ、そういう時は基本的に<嫌いという感情>の方を優先するのが無難かなとは思う。


フィクションなんかの場合はそういう時、<好きという気持ち>が優る展開が多いだろうし結局はそういうのが好まれるんだろうが、現実の場合はなあ。


<好きという気持ち>が盛り上がっている間はいいにしても、フィクションなら一番いい時期だけを切り取ることもできるにしても、現実はそうはいかない。気持ちが冷めてくると今度は<嫌いな部分>が目についてきてしまって、気になってきてしまって、つらくなってくるだろうしな。


<永遠の愛>なんてものは俺も信じちゃいない。(ひそか)(じん)(ふく)(よう)も今でも愛しているし、シモーヌのこともちゃんと愛しているとはいえ、


『永久不変か?』


と問われれば、


『そうだ』


と断言はできない。<愛し続けたいという気持ち>は間違いなくあるものの、それを『絶対』と称することはできないんだよ。



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