焔と彩編 地球人という種の大きな特徴
そもそも地球での文明自体、産業革命が起こるまでの進み具合は非常にゆっくりだったはずだ。
車輪が発明されて、それを使って車両にして、馬に牽かせることで移動や荷物の運搬が劇的に便利になったんだろうが、そこから自動車が発明されるまでは改良改良でずっとやってきたんだよな。それと同じことが今の地球人社会でも起こっているということだ。
だから急激な変化は人間社会にとって決して必須じゃないんだ。
同時に、<エロスという概念>自体も、いつの間にか生まれて広がっていったただけのものでしかないよな。
だってそうだろう? 人間が人間になった時点でそんな概念を持ってたと思うか? <発情>は当然あっただろうが、その発情に最初から必要なものだったか? <エロス>は。
とてもそうは思えないんだよな。
だから、
<地球人という種の大きな特徴>
の一つには違いなくても、それがすべてじゃない。元々備わっていた概念じゃない。エロスが地球人の衝動や向上心に大きな影響を与えているのは事実でも、それだけというわけじゃない。それだけがすべてじゃない。
ここで生きて、子供達の姿を見ていて、それを実感させられたよ。
だいたい、エロスという概念が本当に人間にとって必須のものだとしたら、それに強い嫌悪感を覚えるのが数多くいるわけもないしな。
<性欲>は本能かもしれないが、性欲とエロスはイコールじゃない。同一のものじゃない。エロスは、
<性欲を励起する要素の一つ>
でしかないんだ。性欲とエロスを混同するから、エロスに対する嫌悪感が性欲そのものさえ否定することに繋がってしまうこともあるんだろう。
地球人社会で今なお続く<問題>の一つだよな。エロスに惑わされて性欲を暴走させてしまい、それが結果として<事件>に至る。
ロボットが普及したことで事件に至る前に止めてくれる場合がほとんどだが、それでも残念ながら間が悪く<被害>が生じることもある。
現在の地球人社会では、<強制不同意性交>は終身刑も十分に有り得る重罪だ。これは性別は関係ない。異性か同性かも関係ない。相手が望んでいないにも拘らず強引にことに至ったという点だけが問題なんだ。そんなことになっては誰も救われない。だからロボットは主人を守るために、被害者側であっても加害者側であっても止めようとするし、止める。
間に合えばな。
そうやってロボットが止めようとする<悪事>を思いとどまろうとしないからこそ、罪が重くなるんだ。




