焔と彩編 仲のいい兄妹
まあそれはそれとして、最初は、
<ちょっと異常なくらいに仲のいい兄妹>
だったのが、完全なパートナーになるのにそれほど時間も掛からなかった。
毛皮に覆われているとはいえ男女関係なく<丸裸>だった俺の子供達だが、光や灯でさえ幼い頃はあまり服を着たがらなかったことで、何もかも丸見えの状態で過ごしてたりしたが、それでも焔と彩、新と凛は互いをパートナーとして睦み合うようになった。他の異性の兄弟姉妹に対してはまったくそんな素振りも見せないのに、そうなったんだ。
だから、<エロス>なんてのは別に必須じゃないんだろうさ。むしろ素直で真っ正直な気持ちを分かりにくくするものだとも言えるかもしれないな。
『エロスを感じないから価値がない』
と切り捨ててしまって、相手の人間性や能力についても見ようともしなかったりするんだろう? もしそんな奴が、
『自分の内面を見て欲しい』
とか言ってたらそれこそ、
『どの口が?』
って話だな。他者の表面的な一面しか見てないのは自分の方だってのにな。
エロスに価値を見出すのは好きにすればいいさ。そういうのも個人の自由だろう。でもな、エロスを感じたからといって相手の気持ちや人格を蔑ろにすんのは筋違いだ。
<エロスを感じる格好>をしているだけの相手に対して、
『そんな格好して誘ってるんだろ?』
だとか考えるのは、ただの身勝手だ。
そんな身勝手な奴から身を守るためにも敢えて、
<あけすけであけっぴろげでエロスを感じさせない振る舞い>
をするというのは、逆に効果的ですらあると俺は感じるね。
『はしたない』
だの、
『慎みを感じない』
だの、お前個人の<好み>なんか知ったことか。
自分の価値観を押し付けてくる奴になんか好かれなくて結構。選ばれなくて結構。
どうせそういう奴は、
<自分に都合のいい人形>
が欲しいだけだからな。もっと自分好みの相手が現れればすぐに心移りするだろ。そんなのを相手にしてるのは、時間の無駄だ。精神衛生上もよろしくない。
その点、俺の子供達はちゃんと自分を見てくれる相手を選ぶことができてたと思う。これは焔や彩もそうだ。
その一方で、新と凛のような事例も確かにあったりはする。
でもな、経験を積むことで考え方が変わっていったりするのはむしろ普通だし、なにより最初から相手のすべてが分かる方が逆におかしいだろ。そもそも、自分自身のことさえ完全に分かってる奴の方が例外的な存在だろうしな。
だから、新や凛を責める必要も感じない。




