焔と彩編 心理的な禁忌
走と凱の群れや凛の群れについても注意深く見守っていきたいが、随時触れていきたいが、今は取り敢えず焔と彩について触れていこう。
焔と彩、そして新と凛は、子供の頃から、
『仲が良すぎる』
くらいに仲が良かった。その時点で違和感を覚えたというのは正直なところだ。
でもだからといって俺がどうこうできたかと言えば、そんな気もしない。
なるほど物理的に遠く引き離せば焔達がお互いを探し出してまで結ばれることはなかったのかもしれない。
むしろ地球人社会ではそうするべきだったのかもしれない。
でもなあ、野生においては近親婚そのものは別に禁止されてないんだよな。
実際にまあまあの頻度で起こってるそうだし。
だからといって別に、
『地球人社会でもそれを認めるべきだ』
とは言わないさ。<心理的な禁忌>として定着しまったものを改めていくのは並大抵じゃないのは歴史も証明してるしな。
俺自身、あんまり推奨したいことでもないし。
なにしろそういうのは、
<近親ゆえの気安さ>
から、
<立場を盾にした強要>
が発生しやすいからな。
<親による性的虐待>
なんかはまさにそれだろ。
<親という子供にとっては絶対的な立場>
を利用して性的に服従することを強要して発生する事例が多いそうじゃないか。
しかもそれは、兄弟姉妹の間でも発生する。その事実を無視したいとは思わない。
あくまで、焔や彩および新や凛の間ではそういうのが見られなかったから成り行きに任せてただけで。
結果として新と凛については上手くいかなかったものの、それで二人が不幸になったかといえば、そういう印象も全然ないわけで。
凛は真っ当に命の幕を下ろしたし、新も、レトやルナと一緒に穏やかに暮らせてる。それは確かに事実なんだ。
しかしそれは、あくまでも客観的な立場から確認できたからこそのものなんだよな。そうじゃなければ俺だって諸手を上げて賛成はできなかったし、しなかった。どこまでいってもあの子達の幸せが根底になけりゃ駄目なんだ。
結果として、焔と彩の人生も、本人達にとっては満たされたものだっただろうなと親としても思うよ。
人間のように、
『仕事に精を出して社会の一員として役に立つ』
みたいな形じゃなかったのは事実でも、そんなものは<地球人ならではの価値観>でしかないからな。しかも今となっては『古臭い』価値観だ。それこそロボットの存在がその前提を完膚なきまでぶち壊したしな。
それでも、一度根付いた価値観はそう簡単には消えてしまわないということだ。




