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冗談はやめてくれ(またこんなのか…)

錬是(れんぜ)様。新型ドローンが捉えた映像の中に、これまで確認されていない生物の姿と思しきものが見られます。これについての指示をコーネリアス号が求めてきています」


雨が上がってすっきりした天気に変わり始めた頃、セシリアが俺にそんなことを報告してきた、


「未確認生物?」


新しい種類の生物が見付かること自体は別に珍しくない。そういうものについては概要だけまとめておいてくれれば俺かシモーヌが確認するからと伝えておいてあるんだが、こういう言い方をするところをみると、そういう類型には当てはまらない生物ってことか。


何となく嫌な予感を覚えつつタブレットの方に映像を出してもらう。すると、一目見ただけでコーネリアス号のAIがこちらに判断を仰いできた理由が理解できた。


「なんだ…こりゃ……?」


と呟いた俺の隣で一緒にタブレットを覗き込んだシモーヌが、


「ラミア…?」


と声を上げた。


<ラミア>。伝説などに語られる、上半身が女性、下半身が蛇という想像上の怪物のことだと思ったが、その画面に映っていたのはまさに<それ>だった。あの不定形生物由来だと思しき透明の体だったが。


「マジか……」


まあ、ヒト蜘蛛(アラクネ)の例もあるから今さら驚くほどのことじゃないんだろうが、それにしたって、なあ……


だが驚きは、それだけじゃなかった。草原の中でまさに蛇そのもののとぐろを巻いた姿のそれにカメラがズームしていくと、シモーヌが、


「クラレス…!?」


と息を詰まらせたのだ。その瞬間、俺もピンときてしまった。


「間違いありません、コーネリアス号の乗員の一人、クラレスの姿が再現されてます。もちろん人間部分だけですが」


シモーヌの言葉に、俺は頭を抱えた。


「なんでこう、次から次へと……」


いや、このこと自体は俺が思ってる以上に頻繁に起こってるのかもしれない。その中でこの世界に定着できたものだけが繁殖してるんだろうと推測することは十分にできると思う。こっちにとっては『冗談じゃない』って感じだが。


と、頭を抱えつつ画面を見ていた俺の前で、その<クラレス>が、通りがかったインパラ(に似た動物)に凄まじいスピードで襲い掛かり体を巻き付け、あっという間に絞め殺すという光景が繰り広げられた。


その姿は完全に<蛇>のそれであり、人間的な感性や躊躇いなどは微塵も見られなかった。たぶん、<グンタイ竜(グンタイ)の女王>と同じだ。人間部分はコーネリアス号の乗員のDNAを用いて再現されてるが、人間としての知性や感性は再現されていないっていうパターンだろう。


「もしかして、私もこんな感じだったんですか……?」


シモーヌが青い顔(たぶん)をして問い掛けてくる。<グンタイ竜(グンタイ)の女王>の件を訊いてきてるんだろうなというのはすぐに分かったのだった。



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