凛編 冒険
『ビアンカってば、深が亡くなった時には泣いてたんだよ』
灯は悪戯っぽくそう言うが、そこには間違いなくビアンカへの労りが込められてるのは察せられた。
それをビアンカも分かってくれているのが見て取れる。二人の間にある信頼関係がとても強固なものだと実感できるんだ。だからこそ安心して任せていられる。深が亡くなった時に参らなかったといって、ビアンカが深を軽んじてたわけじゃないというのも感じられる。
そういうのがあればこそ、俺達はお互いを尊重することができているのは間違いない。
今回こうして集まったのは、これを改めて確認する機会でもあった。
だからなんだかんだ言ってもこんな風にたまには顔を合わす必要があるんだと思わされたよ。
で、大人組が顔を合わせてる一方で、子供達は存分に<冒険>を楽しんでたようだ。立ち入れる場所についてはそれこそ隅から隅まで見て回ってたのが、映像にも記録されていた。<監視カメラ>もそうだが、ドーベルマンMPMやホビットMk-Ⅱらが見ていたんだ。
でも、子供達はロボットに慣れてるからな。まったく気にするでもなく、
「次はこっち行ってみよう!」
和が言うと、
「わ〜♡」
喜んで走っていく。さすがに途中で錬慈がバテても、
「ほら!」
やはり和が彼を背負って連れて行ってくれた。決して置き去りにはしない。
『子供は残酷だ』
などとよく言われたりもするが、そりゃ好きでもない相手に気を遣うような形で外面を取り繕えるだけの経験値がないだけで、大切にしたい相手に関しては逆に余計な回りくどいことをしなかったりもするぞ?
<残酷さ>も、要は経験不足からくる未熟さの所為で、自分がしようとしてることが何を招くのかを想像できないからこそのものだというのが大きいしな。
そこにはっきりと分かりやすい<悪意>はないんだよ。幼いうちから明確な悪意を持って残忍な振る舞いができる子供もいないことはないんだとしても、そんなのは極めて特殊な事例だろう。
普通の子供は好きな相手に対しては普通に優しく対応するもんだ。
あくまで、並の地球人程度の体しか持たない錬慈が、和におんぶされててもし転倒とかした場合が怖いだけではある。頑健さではパパニアンにさえ遠く及ばないしな。
まあその辺りも、ロボットを待機させることで備えてるわけだ。
『痛い思いをすることで成長する』
なんてことを信じてる人間には<過保護>に思えるかもしれないが、その<痛い思い>が致命傷だったら何も意味がない。




