凛編 シャトルバス
「こんにちは♡」
「こんちわ~♡」
和と陽と萌花と錬慈と蒼穹と黎明は、顔を合わすなりその場に集まって賑やかにはしゃぎだした。
こうして直に会うのは初めてだが、映像を通じてではこれまでにも散々、会ってきたからな。普通に親しくなれてるんだよ。
だからか、誰が提案したわけでもないのにさっそく<追いかけっこ>を始める。
ただ、一人だけ身体能力が地球人のそれでしかない錬慈は、当然のこととしてはまったくついていけない。<鬼ごっこ>で鬼にされればずっと鬼のままだろう。
だが、子供だってそれが面白いかどうか判断くらいはできるんだよな。それじゃ面白くないと思えばこそ、彼を鬼にすることはない。
誰かを貶めることで自尊心を満たさなきゃいけない理由がこの子達にはないんだ。
子供は配慮が足りないから、誰かを貶めることで自身が満たされると知れば躊躇なくそれをできてしまうだろう。しかし、そもそも基本的に普段から満たされていればそんなことで自分の心を満たす必要がそもそもないわけで。
それだけの話だ。
だから、和と陽が、錬慈が捕まりそうになれば抱えて逃げてくれたりするし、抱えて逃げるだけじゃなくて錬慈自身にも走らせてくれたりもする。
<追いかけっこ>を楽しみたいだけであって、錬慈を貶めて笑いものにしたいわけでもないんだよ。
が、今は遊ぶためにこうして集まったわけじゃない。
「お~い、そろそろ行くぞ~」
俺がそう声を掛けると、
「は~い!」
皆、息ぴったりに応えてくれる。そこに、バスが到着。<空港>からコーネリアス号へと向かう、
<シャトルバス>
だ。<移動電源>を何台も作ってきたことで培ったノウハウを用いて三十人ばかりが乗れる小型のバスを作ったんだ。今の時点じゃこれで十分だからな。しかも、一部の座席を折りたためばビアンカも一緒に乗れる優れモノだぞ。
アラニーズが乗り降りするために後部がハッチ状のドアになってるんだ。最後部にも椅子は設えられているもののそのドアを使う時にはもちろん折りたたまれて収容できるようになっている。
今まさにそういう形でビアンカが乗り込めば、俺達は側面のドアから乗車した。
「おーっ!」
錬慈は、生まれて初めて乗る<バス>にも興奮を隠しきれないようだ。こういうところも、
『男の子だなあ』
と感心したり。穏やかな気性でありつつ、乗り物とかには興味も見せるんだよな。それでも、ちゃんと座席には座ってくれる。
麗も、ローバーに似た乗り物であるこれにはそれほど怯えた様子も見せなかったな。




