凛編 久しぶり
<客>は、単なる<契約相手>だ。<神様>なんかじゃない。自分を神様だと自惚れるとか、<まともな大人>のすることか?
だいたい、真っ当に社会に出て働いていれば、自分がどちらの立場にもなるっていうのも分かるだろう?
<買い手側>にも<売り手側>にも。それで自分も客から理不尽な態度を取られたことはないか? その時にどう感じた?
<仕事をする者>として努力し、より良いものを目指すのは当然のことだろうさ。だがそれと客の理不尽を甘んじて受け入れるのは違うぞ?
ここに出来上がっていく社会においては、それをちゃんとわきまえていきたいとつくづく思う。
まあ、俺の家族も仲間達も、ちゃんとわきまえてくれてるけどな。
ともあれその後は、麗も陽がいることもあってかまあまあ落ち着いてくれて、問題なく行程を終えることができた。
着陸の際にも少し怯えた様子ではありつつ。
密達も慣れれば好き勝手してたしな。麗も何度も経験すれば慣れるにしても、慣れさせるためこういうことを経験させるというのも違うんだろうなとは思う。
そもそもその必要がないように、それぞれの集落で基本的には完結するように、ライフラインの構築を目指してるんだしな。
それこそ<墓参り>などの事情でもない限り。
で、ビクキアテグ村とコーネリアス号とのほぼ中間地点に設けられた<空港>に無事到着すると、
「よ! 久しぶり!」
にこやかに声を掛けられる。灯だった。その腕には蒼穹が。
「こんちわ~♡」
母親そっくりの笑顔で挨拶してくれた彼女に、
「はい、こんにちは。蒼穹が元気そうでお祖父ちゃんは嬉しいよ」
俺はただただ<祖父の表情>になってるのが自分でも分かった。そしてそんな俺を、シモーヌがまた嬉しそうに見ている。
だが、出迎えてくれたのは灯と蒼穹だけじゃなかった。二人の後ろには大きな影。
ビアンカだ。その背中から黎明が顔を覗かせている。
多くの仲間が加わったことでそれどころじゃなくなっていたのもあるが、ビアンカは元々、走達のことが好きだったんだよな。だからこそ走の訃報は彼女にとっても大きなものだった。
そしてビアンカが走を参るために久利生が未来達のことを見ててくれると。
ルコアも、ビアンカほどは走達との関わりが深いわけじゃないから、敢えて村で留守番をすることに。
イザベラやキャサリンに至ってはそれこそ、
『走? 誰それ?』
なわけで。
ケインはビアンカと一緒ならどこにでも行ってくれるだろうが、今回はさすがに自重してもらったそうだ。




