新型ドローン(いよいよちゃんとしたものになったか)
その日はまた、朝から激しい雨が降って、雷もすごかった。当然、密達も怯えてる。シールドが働いてるここには落雷はないといっても、そんな理屈は彼女らには分からないしな。
ただ、俺としても激しい雷というのは別の意味で緊張するというのはある。
雷自体は別に珍しいことでもないからそれは気にならないが、やっぱり、あの不定形生物と雷ってのはある意味では何が起こるか分からないからな。
シモーヌが現れて以降は特に何もなかったが、今日は何だか胸騒ぎがする。
と思うと、ガーン! ドドドドドドドッッ!!っとデカいのが落ちた。川の方だ。
「落ちたな」
「落ちましたね」
さすがにびっくりしたらしい灯が泣くのをあやしながら、俺とシモーヌは顔を見合わせていた。
「ドローンを派遣。警戒を強化します」
エレクシアが、俺が命令する前にそう判断して対処してくれた。「頼む」と俺も追認する。
しかし、俺の感じてた胸騒ぎは杞憂だったのか、雷雨が去って青空が広がって来ても、特に変わった様子は見られなかった。
「今回も問題なしか……」
ドローンが送ってくる映像をタブレットで確認しつつシモーヌと一緒にホッとした。
そうそうあんなことはないって分かっててもやっぱり心配にはなる。何か物騒なキメラが誕生することもそうだが、シモーヌのような事例が今後も起こりえないとは限らないからな。
もしかすると、この近くでは起こっていなくても、別の場所では起こってるかもしれない。そういうことを考え出すとキリがないから気にしないようにはしたいが、これも性分だからなあ。
そういうことも含めて調査する用にメイフェアがコーネリアス号の工作室で作ってくれてたソーラーバッテリー搭載の新型ドローンの試作品は、かなりの完成度に至っていて、それを試験的に放っている。
俺が元々使っていたもの(全長三センチ程度)はもちろん、コーネリアス号の装備品だったもの(全長十センチほど)に比べてもかなり大型で、直径は五十センチほどある。これは、この地で確保できた材料で作ったバッテリーが大きくなってしまったことに加えて、必要に応じてサンプルとかを回収する為の機能とかを盛り込んだらそうなってしまったんだよな。さらに、俺が使ってたマイクロドローンも搭載して、必要に応じてそれを放つことができるようにもしてあるので、マイクロドローンの<母艦>とも言えるか。
残念ながらここまでは想定通りの性能を発揮してくれてなくて故障したり行方不明になったりってことが続いてたが、先日完成した最新のバージョンは今のところ順調に作動してるようだった。
計算どおりの性能を発揮してくれれば、太陽がある限り、百年間はコーネリアス号のAIの指示の下、半径二百キロの範囲を探索してくれる筈だ。
もっとも、その為には、コーネリアス号の指令が届くように、相互にリレーできるだけの数も揃えなきゃいけないが、それも順次制作中である。
そしていずれは、完全なスタンドアローン型のそれも作って、まずはこの大陸全体を調査したいとも思ってたのだった。




