可能性(いや、あってほしくはないんだが)
俺がいくらあれこれ考えこんでいようとも日々は淡々と過ぎていく訳で、俺達もそれに合わせて暮らしていた。
明と角の間に子供ができたらしいのもそれだな。気が付くと明の腹がぽっこりと膨れ、これまで以上に周囲を警戒する姿が見られた。また<孫>が生まれるのか。
「正直、もう覚えていられんぞ…」
と冗談めかして言ったものの、本心では嬉しくもある。子供達がちゃんとこの世界に馴染んで生きている証拠だと感じるからな。
凱と旋の子で、俺の初孫でもある円と妍もすくすくと育ち、恵も走の子を宿したらしく大きな腹を抱え、それでも狩りには赴いていた。
すると走も、恵と一緒に狩りをする。普通ライオン人間のボスは群れを守るのが主な役割であまり狩りには出掛けない。しかし走と凱の二本柱という特殊な群れであるせいか、若干、その辺りの様子が違っている。走が恵と共に狩りに出ている間は凱と旋が留守番をし、二人が帰ると交代するといった感じのようだ。
しかも、群れの中で走派、凱派に分かれているらしく、その辺りも面白い。走と凱が成長することによって、または群れが大きくなることによって、二つに分裂する可能性も出てきたか。
まあこの辺りについてはシモーヌが注意深く見守ってくれている。
「円くんと妍ちゃんもすっごく可愛いんですよ♡」
と、甥っ子や姪っ子の成長に目を細める伯母って様子も見せつつ、
「でも、灯には敵いませんけどね♡」
と、<親バカ>ぶりを発揮することも忘れない。シモーヌが来てくれたことは本当に良かった。何だかこう、<潤い>があるんだよな。エレクシア達メイトギアにはない潤いのようなものが。
って、どうしてもロボットとして人間との間に一線を引いてるエレクシア達のことを考えれば当たり前なんだが。
なんてこともありつつ、不定形生物の存在については注意深く監視を続けてる。コーネリアス号の乗員達の件はもういいとしても、あの<捕食>と言うか<同化>には警戒をしたいとも思ってるんだ。
転生よろしく<向こうの世界>に行くだけなんだとしても、現状では連絡も取れなくなる訳だから、いきなりそんな形で別れがあるのも辛いしな。
あと、イレーネが捕食された例の<Tレックスに似た巨大生物>についても、どうも、種として継続的に繁殖が可能なほど他に何頭もいた形跡が、少なくともこの周辺では見られないことから、あれも不定形生物由来の個体が繁殖した結果なんじゃないかと睨んでるんだ。
と言うことは、あれと同じようなのがまた現れる可能性も無い訳じゃないということな訳で、こっちはそれこそ命に係わるからな。




