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凛編 悪気はない

俺は、自分の子供達が他者に対して理不尽な真似をするのを望んでない。だから俺自身、子供達の前で理不尽な振る舞いはしないように心掛けてきた。


親が理不尽な振る舞いをしていたら、子供も当然、


『そういう風にしても構わない』


的に考えるようになるだろうしな。『必ずそうなる』とは言わないものの、


『そうなる可能性は非常に高くなる』


とは思うよ。


問題ある親の下で育った人間がちゃんと真面目に生きているという例も確かにあるんだろうが、でもな、そういう人間もいろんな<闇>みたいなのを抱えてたりするんじゃないのか? あくまでそれを何とか制御できてるってだけで。


『それを制御できてるっていうのが立派なんだ!』


とか言うかもしれないが、いや、それを制御しているということは、何らかの理由で制御が失われたら一気にヤバいことになるんじゃないのか? 普段はおとなしくて人畜無害にも思われてる人間が酒で泥酔すると豹変したりってのもよく聞く話じゃないのか? そんなリスクは少ないに越したことはないと思うんだがなあ。


(ひかり)(あかり)も、そもそも<獣人としてのメンタリティ>も持ち合わせていて割と冷淡で残酷なこともできてしまう一面があるから、そういうのに加えて、


<他者に対して理不尽に振る舞っていいという感覚>


まで持たせてしまったら、それこそおっかないとしか思わないんだよな。


なるほどイザベラやキャサリンは、理性的なビアンカや久利生(くりう)を両親として育っていたものの以前は<傍若無人>なところが多く見られたにせよ、それはあくまで、


『まだ何も分かっていない幼さ』


がまずあって、そこに、


<アラニーズとしての身体能力>


が加わっていることで、


『本人には別に悪気がないのに周囲に迷惑が掛かるような振る舞いができてしまう』


というのが大きかったんだよな。


地球人の赤ん坊だって、本人はまったく悪気なくやらかしたりするよな。


食べ物や飲み物をぶちまけたり、ティッシュやトイレットペーパーを引っ張り出したり、何でもかんでも口に入れたり。


俺だって、赤ん坊の頃に家の庭で砂を食べていたことがあったりしたそうだ。それこそ、当時家にいたメイトギアが、母親に呼ばれてほんの一瞬だけ目を離した隙に、手で砂を掴んで頬張ったんだとか。


そういうのは本人がダメージを受けるだけだとしても、親を始めとした保護責任者が対処しなきゃいけなくなるから、どのみち迷惑を掛けることになるだろ?


そういうのは実際にあるんだよ。だがやっぱり、子供自身に悪気はないんだ。



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