同じことの繰り返し(人間ってそういう部分あるよな)
しかし改めて考えてみると、シモーヌと不定形生物との件については、やっぱり俺の手には負えないことのような気がするんだよなあ。だから、俺の家族の件やイレーネの件で俺があれこれ思い悩むのは仕方ないとしても、この件についてはあまり考え込まない方がいいとも思えるようになってきた。
コーネリアス号の乗員達とも何らかの交流が図れればとも思うが、それに囚われなくてもいいか。
だいたい、下手に<本物の秋嶋シモーヌ>と交流すれば、ここにいるシモーヌが、『自分はコピーでしかない』ということを改めて思い知らされることにもなりかねない訳で、わざわざそこまでする理由が果たしてあるのだろうか?という気もするんだよな。
彼女らは彼女らで、あの不定形生物の中の世界で穏やかに生きていられてるらしいんだから、今さらこっちと関わり合いにならせる理由もないんでは?
シモーヌの告白から時間を置いたことで、その間にイレーネの件を挟んだこともあって、俺の方も冷静になれたんだろうな。
「シモーヌも、コーネリアス号の乗員達のことはそっとしておいた方がいいと思うか?」
と、敢えて彼女にも訊いてみる。するとシモーヌもふわっと柔らかい笑みを浮かべて応える。
「そうですね。彼らのことはもう、私にとっては遠く離れた友人のようなものだという気がしています。連絡を取り合えればそれに越したことはないけれど、お互いに生活もあるのだから、無駄にかき乱す必要も感じません」
「そうだよな。俺も今さら、故郷の知り合いと無理に連絡を取ろうとは思ってない。懐かしくて寂しいような気がした時期もない訳じゃなかったが、今さらだしな」
「今さらですよね」
そう言って俺とシモーヌは、クスクスと笑い合った。何がおかしいのか自分でもよく分からなかったが、何故か笑えてきてしまった。もしかしたらいちいち考えすぎる自分のことが滑稽に思えてきたのかもしれない。そしてそれは、シモーヌも同じようだった。たぶん、俺と彼女はよく似た部分があるんだろう。
あれこれありつつも、俺達はもう、ここの生活にすっかり馴染んでる。ここでの生活こそが俺達にとっては人生そのものだ。きっと辛いことや悲しいこともあるだろうが、そんなのはどこで暮らしてても同じだ。だったらくよくよするのも馬鹿馬鹿しい。
同じようなことはこれまでも何度も考えてきた気もする。そして最後には結局、こういう結論に至るんだ。これからもきっと同じようにくよくよ考えて、落ち着いたらまたこの結論に至って、俺達は生きていくんだろうな。
いや~、今日もいい天気だ。
とか思ってたら、急に空が曇ってきて、雨が。
「うお~っ! 洗濯物が~っ!!」
などと言いながら、エレクシアやセシリアや光にも手伝ってもらって慌てて洗濯物をといれるのだった。




