凛編 リーダー役を配する
走と凱の群れについて詳しく触れると、ボスである二人が常に全体を指揮しているわけじゃなく、実はいくつかの<小集団>に分かれているらしい。
そしてそれぞれの小集団には<リーダー>とでも言うべき個体が存在する。
これは、パパニアンの群れの特徴によく似ているな。だが、走も凱もパパニアンの群れとは、興味本位で俺達に近付いて(偵察しに)きていた一部を見たことがあるくらいでそれ以外にはほとんど関わったことがないはずだから、真似をしたと考えるのは少し無理がありそうだ。
だが、走も凱も俺の子供で、俺の下で育ったから、地球人としての俺の考え方に影響を受けている可能性は十分に考えられるな。俺が光を<チームB>のリーダーにしたように、
<小集団を編成し適宜リーダー役を配する>
というのは、人間(地球人)なら普通に行うことだ。<俺の群れ>においては俺が<ボス>だが、ボスが一人ですべてを管理監督するなんてのはもちろん現実的じゃないわけで、多くをエレクシアに任せていたのは事実。そしてエレクシアは、同じメイトギアであるセシリアやメイフェアを指揮していただけじゃなく、子供達についても指揮監督役を務めてくれていた。
『頼れる者がいればその者を上手く使う』
ことが地球人社会では当たり前のように求められてきたし、俺もそのことを実践しようとは心掛けてきた。
もしかするとそんな様子を見ていたことで、自然と身に付いたのかもしれない。そしてそれを実践していると。
そうだとするなら本当に、
『親が何気なくしていることを子供はちゃんと見ていて、真似る場合もある』
のを親は自覚してわきまえるべきだとつくづく思う。反社会的な振る舞いをする親の下で育った子供が同じく反社会的な振る舞いをする傾向が強いというのも結局はそういうことなんだろう。もちろん常にそうなるとは限らないものの、少なくとも世間一般の印象として語られるようになる程度には実例もあるし、実際、家庭環境と子供の非行との因果関係については散々調べられてもきて、事実関連性も確認されているとのこと。メイトギアの普及でしっかり<記録>として残るから、確認も容易になる。
<人間の証言>だけでは正確性に欠けても、ロボットであるメイトギアは見聞きしたことをそのまま記録するわけで。
『言った言わない』
は、ロボットの前では通用しない。データを改竄する方法はないわけじゃないにしても、大した知識もない一般人にできることじゃないしな。




