凛編 ちゃんと認識してればこそ
俺は別に、
『<リアル>こそが尊く素晴らしいもので、フィクションなんてのは所詮は作りもので紛い物にすぎない』
みたいに言いたいわけじゃないんだ。そこに価値や魅力を感じてしまうことについても馬鹿にしたいわけじゃない。ただ単純に、
『それはどうしたって<現実>じゃない』
という厳然とした事実があると言いたいだけなんだ。その事実を認めた上でもフィクションを楽しむことはできるしな。
『現実とフィクションは別物』
であることをちゃんと認識してればこそ楽しむこともできると思ってる。
フィクション内の演出なんかを、
『リアリティがない』
といちいち貶すなんてのはフィクションを楽しめてないだろうと感じるね。
まあ俺自身はフィクションに対してそこまで思い入れもないからどうでもいいっちゃいいんだけどな。
ペットロボット飼うことも、生身のペットを飼って、
『命を実感する』
と口にするのがいるのも、別にどうでもいいんだ。楽しめる人間が楽しんでいればそれでいい。
あくまで俺は、<命そのもの>がここで織りなす<ドラマ>を目の当たりにしてることで自分自身の命についても考えさせられてるってだけなんだよ。
すっかり老いた凱が、わざわざ妹達のために獲物を獲ってきてくれたのもやはり<命のドラマ>の一つだしな。
そして、老いたりとはいえそこは<年の功>というものか、こうやってちゃんと一人でも獲物を捕らえられるのがまた、凱の力が本物だというのを実感させられる。
やっぱり彼は立派な<ボス>だ。
<走と合わせて二人で一人のボス>
ではあっても、そもそもの力量が不足していたらボスとして仲間達から認めてもらえてなかっただろう。
そんな凱と走の群れは、二人がボスになったばかりの頃からはかなり様変わりしている。特に規模が大きくなった。走と凱のそれぞれが標準的な群れを持ち、その二つを合わせた場合を想定しても、確実に大きい。
レオンの群れとしてはコンパクトとも言える凛の群れとは対照的だ。
まあそんな走と凱の群れと当たり前のように交流があることで、逆に独自性を出すことができてきたというのもありそうだが。
無闇に勢力を大きくしなくても、こうして凱が獲物を分けてくれたりすることもあるから、ある意味では、
『凛の群れも走と凱の群れの一部である』
と考えたりできるかもしれない。
まあ、コーネリアス号の船体を挟んでるとはいえ、<巣>が隣り合ってるなんてのは他のレオンの群れじゃ考えられないしな。




