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凛編 群れが完全に崩壊した瞬間

まあとにかく、(ゆう)が敗れたことで、ボスの座を退くのがこれにて決まった。


とは言え、(ほう)は納得してないみたいだが。


「グルル……ッッ!」


()号機の背後からそれこそ殺意しかない表情で睨み付けながら牙を剥く。


だが、


「……」


(ほう)(ろう)(あん)以外の仲間達は、(ゆう)を退けた若い雄と共に、狩りへと向かった。後には、意識を取り戻し何とも言えない黄昏た様子で地面に座り込む(ゆう)を含めた四人だけが残される。


そして、(ろう)が、


「ウルル……」


低く喉を鳴らして巣がある方へと向かって歩き出すと、(ゆう)がそれに続き、(あん)も同じく歩き出し、


「……」


最後に(ほう)が、不満しかない気配を放ちながらも三人の後ろについていった。


群れが完全に崩壊した瞬間だった。(ゆう)は確かに負けたが、(ほう)だけじゃなく、(ろう)(あん)も、若い雄をボスと認めたわけじゃないのは明白だからな。


そんなこんなで、結局は狩りを行うこともなく帰ってきた四人に、


「……」


(りん)もこれといって目立ったリアクションを見せることなく孫達と一緒に出迎える。


するとそこに、


「ルルル……」


と喉を鳴らしながら現れた影。


(かい)だった。(かい)が突然、(りん)達の巣に立ち入ったんだ。しかし、(りん)達の方は特に身構えることもなく彼を見た。と言うか、彼が手にしていたものを見た。


歪な形で地面に垂れ下がった塊。


<獲物>だ。おそらくはインパラ竜(インパラ)の死体だった。


「グル……」


小さく声を発すると、(かい)は手にしていたインパラ竜(インパラ)の死体をその場に放り出し、踵を返す。そしてコーネリアス号の向こう側へと姿を消した。


どうやら<餌>を分けに来てくれたらしい。


実は、(ゆう)と若い雄が争っているのを、(かい)が離れたところから見ていたんだ。それがドローンのカメラに捉えられていた。


当然、(ゆう)が敗れたところも彼は見ていた。


だからこそ、狩りをしないまま巣に戻った(ゆう)達に、自身が捕らえた獲物を届けに来てくれたらしい。


彼が持ってきたインパラ竜(インパラ)は明らかに老いた個体で、だからこそ一人で捕らえることができたんだろう。


普通のレオンなら有り得ない行動だった。いくら血の繋がった妹の家族とは言え、<別の群れ>に餌を分けるなど。


しかしこれまでにも、何度も餌を分けてくれたことがあったんだよな。特に、(りん)(あらた)と別れた後に草原へとやってきたものの慣れない土地での狩りが上手くできなくて獲物が取れなかった頃にはな。


(かい)は、妹のことも覚えていたようだ。そして助けてくれたんだろう。


レオンとしては奇妙とも言える振る舞いではあるものの、人間である俺のところで育ったのが影響してるのかもしれない。



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