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凛編 元ボス

『ボスの座を譲る』


これは、今のところ(ほまれ)が最も上手くやったと言えるだろうな。


群れの仲間達は今でも(ほまれ)をボスだと思ってるが、実権はすでに(とどろき)に移っており、実際の<ボスの役割>も(とどろき)が担ってる。(ほまれ)は実質、(とどろき)の<後見人>や<後ろ盾>といった感じだな。


これ自体、パパニアンが人間(地球人)の感覚をわずかでも残しているからこそのものだとも考えられるそうだ。野生だとここまで絶妙なバランスで成り立つことはまずないらしいし。


まあ、野生の場合はその必要もないんだろうが。


パパニアンにおいても、一般的なパパニアンの群れではほとんど見られないようだ。ただ、『ないこともない』のは、ドローンによる調査でも分かっている。ゆえに、<人間(地球人)の感覚の影響>が考えられてしまうと、レックスは言う。


「地球人の社会でも、<形式上の責任者>と<実権を有する者>が別だったりすることはあるからね。しかも(ほまれ)達の場合、(とどろき)は単に(ほまれ)に利用されているだけじゃなく、彼自身の実力を発揮した上であくまで穏当にその関係が成立している。とても素晴らしい。(ほまれ)の能力の高さが窺えるというものだ」


と。


<息子>が褒められて、父親としては何ともくすぐったいような、それでいて嬉しいような、奇妙な気分だ。


自慢の息子なのは確かではありつつ、他人からそんな風に評価されるのは気恥ずかしさもある。


しかし、いつもいつも上手くいくとは限らない。(りん)は、(ほまれ)とは兄妹ではありつつ、母親は違うし、種族も違う。同じ両親のもとに生まれた兄弟姉妹でさえみな同じとは限らないように、(ほまれ)が上手くやれたからといって(りん)もとは限らない。


なにしろ(りん)は、別に<新しいボス>について具体的に何かをしようとはしていないんだ。若い雄達を諫めるでもなく、(ゆう)を庇おうとするでもなく、ただ任せているだけなんだよ。


成り行きに。


子供(孫)達の相手をしてくれてはいるものの、もうすっかりボスとしての役目については興味も失せたかのように見向きもしない。


いや、ボスを退いた<元ボス>なんてそんなもんだろうけどな。むしろ、あれこれ手出し口出ししてくる<元ボス>の方が迷惑だって気はする。


それに、形の上だけとはいえ、本来は(ゆう)がこの群れのボスだ。若いボス候補に対処するのは彼の役目であるとも言えるか。


でもなあ、(ゆう)もボスとして立場にはあんまり未練もなさそうなんだよな。


そんな彼を『情けない』と評するのもいるだろうが、俺としては別にそれを悪いとは思わない。


『それが(りん)達だ』


と思ってるんだ。



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