凛編 摂理そのもの
日付が変わり、ドーベルマンDK-a伍号機が手を貸すことでかろうじて獲物を捕らえることに成功して二日ぶりのまともな餌にありつけた凛達は、ホッとした様子だった。
ただ、若い雄二人は、さすがに不満そうな様子をまだ見せている。自分達がしっかりと集中できていなかったことでインパラ竜に気配を悟られてしまったことを反省するんじゃなく、侑が頼りないから上手くいかなかったんだと考えているらしい。若い雄達が口にしてた<レオンの言葉>も、それを意味するものだったと、エレクシアが解析してくれた。
典型的な<他責思考>というヤツだが、えてして自分以外に原因を見出そうとしてしまうのは、責任を擦り付けようとしてしまうのは、知能の高い生き物ならそれこそ珍しくないそうだ。
むしろ人間だけが、
『他責思考だけでは問題は解決しない』
と理解できるらしい。
まあ実際に、人間社会は非常に複雑で、
『自分以外の誰かに責任を擦り付けるだけでは状況を変えることができない』
のも事実だからな。<適切な対処>を行うためには<原因>を冷静に客観的に捉えて分析する必要が出てくるということだ。
そしてそれができるだけの知能も備えてる。だからこその<人間>だ。
対してレオンの社会では、
『自分は悪くない。あいつが悪い』
が通ってしまうことがある。と言うか、気に入らないことがあれば力尽くで対処すればいいんだ。
ただし、自分が勝つことが大前提だが。
負ければそれこそすべてを失う可能性もある。
あるが、そのリスクも含めて、<野生の道理>というものだろうさ。
若い雌達は、そんなレオンとしての生き方を実践しようとしているところだろう。
人間(地球人)の場合、その選択は個人だけのリスクにとどまらず、時には社会そのものさえ揺るがしかねない大きな影響を与えるものになりうる。<テロの動機>であったり、<戦争の火種>であったり。だからその手の<身勝手>は許されないことが多い。
だが、野生の生き物の場合は、どこまでいっても影響は限定的だ。自分自身を含めた局所的なものでしかない。だからこそその身勝手も許容される。されてしまう。
ゆえに今この時点でそのための行動を起こしてもおかしくない気配もありつつ、取り敢えずおとなしく<序列>を守って餌にありついていた。
<ボスの交代劇>
は、レオンにとっては摂理そのものである以上は、俺は干渉しないでおこうと思ってる。たとえ我が子がその地位を追われることになっても。




