凛編 人間(地球人)という種
『野生の獣の群れは、仲良しグループじゃない』
それはれっきとした事実だと思う。仲良しグループなら、リーダー的な存在が衰えを見せたとしても、まるで別人のような振る舞いをしたりしない限りは、理不尽な真似をしたりしない限りは、仲間から気遣ってももらえるだろうさ。それが、
<人間(地球人)という種>
だ。
『単純に<力>だけがすべてに優先する価値だというわけじゃない』
という価値観を持ち得るからこそ、文明を築き社会を築き、人間(地球人)という種そのものの力を高め、それこそ地球さえ飛び出して宇宙にまで広がっていけたんだからな。
そうじゃなきゃ人間(地球人)はとっくに滅んでいただろうとさえ言われている。実際、人間を何度でも滅ぼせるだけの力を人間(地球人)自身が持ってしまったしな。
まあ、今じゃ<他の惑星>にまで活動の範囲を広げたことで、他の惑星の人間(地球人)が滅んだとしても大きな影響を受けずに済む可能性は出てきたが。
この事実は、
<人間(地球人)という種の生存戦略>
としては正しいとも言われているそうだ。いくら惑星そのものを破壊することができる<地殻反応弾>とも称される恐ろしい兵器を手にしていても、<恒星間航行技術>という技術を手にしていても、何十光年何百光年という距離は、容易なものじゃないしな。
そして、それぞれの惑星だけで完結できるだけの技術もある。他の惑星からの資源が入ってこなくなれば一部の技術は維持できなくなり、それに伴って生活レベルも下がるかもしれないが、二十二世紀頃まではほとんど地球だけで完結していたんだから、その辺りまでで我慢するなら十分に生きていけるだろうさ。
もっとも、人間(地球人)って奴は途轍もなく強欲だから、一度手にした生活レベルを下げることを是としない、『受け入れられない』として、争いを始めてしまう可能性も否定はできないが。それによって資源の奪い合いを始めて自らを滅ぼしてしまう可能性も否定はできないが。
さりとて、『可能性がある』というだけなら、それは別に<確定未来>というわけじゃないし、<回避できる可能性>だって十分にあるわけだ。
何十もの惑星でそれぞれに生きている人間(地球人)がすべて同時に滅んでしまう確率の方が限りなく低いだろうしな。
ただそうなると、もはやそれぞれの惑星の<人間>達は、<地球人>とは言えなくなってくるのかもしれないなあ。
これについてはもはや実際に、
『自分達は地球人じゃない』
と言い出してる者達もいるそうだ。




