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凛編 群れのボス

こうして狩りそのものは成功したものの、俺は正直、腑に落ちないものも感じていた。手放しでは喜べなかった。


なにしろ完璧にガゼル竜(ガゼル)の首に喰らい付いたはずの(りん)が振り払われてしまったんだ。


もちろんガゼル竜(ガゼル)の方も死にもの狂いで抵抗したんだろうが、今回の個体が飛び抜けた力を持っていたとはまったく思えない。


ガゼル竜(ガゼル)としては実に平均的な個体だと思われます。画像解析の結果もそれを裏付けています」


俺の様子を察したエレクシアが、ロボットらしくデータ解析の結果を淡々と告げてきた。


「そこから導き出される推論は?」


改めて問い掛けると、


(りん)の筋力の低下が著しいということです」


俺でも思い付いてしまうような、身も蓋もないものだった。実際、俺自身もそれは感じてた。むしろそれ以外の理由が思い付かない。今回の状況を合理的に説明できるものが思い付かない。


「衰えた……ということか……」


本当にそのままな考えを口にする俺に、


「でしょうね……」


シモーヌも相槌を打つ。


その膝には、今日も萌花(ほのか)と一緒に目一杯遊んで夕食を済ませ風呂に入った後すぐに電池が切れるようにして眠ってしまった錬慈(れんじ)の姿が。


今回の(りん)とはまったく真逆のそれだ。(めい)の時も(しょう)の時も(しん)の時も(じょう)の時も、まるで対比するかのように若々しい命が傍にあった。<命の循環>を意識させられてきた。


それと同じか……


生きている以上は決して避けられない<現実>。それが(りん)にも訪れたということだな。


もちろん、今すぐにどうこうというのはないと思う。(めい)達だって衰えを実感してすぐに亡くなったわけじゃない。


ただ、確実に<その時>は迫ってるのも事実だろう。


だがその前に、<群れのボス>という立場だと別の問題も出てくる。


『群れをまとめきれるようになるか?』


という問題だ。野生の獣の場合は、当然のこととして<強さ>が非常に重要な要素になる。


必ずしも『それだけ』ではないにしても、決して軽んじることができるようなものじゃない。


だから(りん)の群れそのものが今後どうなっていくか注視していく必要があるだろうな。


一応、体裁としてのボスは(ゆう)なんだが、そして次のボス候補は(ろう)なんだが、当然、他の雄もボスの座を狙ってはいる。安定した群れではあるものの、必ずしも仲良しこよしなだけじゃない。<仲良しグループ>というわけじゃないんだ。


ボスの力量がそれこそ命にも直結するような面がある以上は、むしろそうでないとおかしいとも言えるけどな。


俺もそれは承知してる。



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