凛編 利用してるだけ
まあなんにせよ、凛の群れにとっては彼女の選択が<正解>だったってことだ。だから他人がとやかく言うことじゃない。
走や凱の群れにしたって、普通のレオンのそれじゃないにも拘わらず、すごく安定してるしな。
『ロボットが守ってくれてるおかげだろ』
と言うのもいるかもだが、いや、ロボットはあくまで外的脅威から群れを守ってくれてるだけで、内的要因で崩壊するような事例については必ずしも有効じゃないと思うぞ。
メイトギアくらいのロボットならともかく、今のアリスやドライツェンやドーベルマンやホビットじゃ、そこまでは対処しきれない。いずれはそこまで対処できるようになるまでにしたいが、今の時点ではまだ無理だ。
按が伍号機のおかげで穏やかな心理状態でいられてるのも、あくまで彼女の方が伍号機を選んでくれただけだしな。だから按以外は、そこまでロボットに気を許してるわけじゃないんだよ。頼ってるわけじゃない。あくまで『利用してる』だけだ。
その『利用してるだけ』ってのがすごいとはいえ。
とにかく、凛達の群れが現状で上手くいってるんだから、それでいいさ。
と、ガゼル竜の群れの方からも自分達の姿が確認できる位置まで来た凛達は、地平線の向こうに日は完全に落ちて暗くなっているもののさらに身を屈めて移動するようになった。草むらに潜むためだ。
ガゼル竜も、名前の由来となった<ガゼル>に似て首が長く視点が高いことで周囲を見渡し警戒するタイプの草食獣だが、暗いところでの視力そのものはレオンには及ばないようだ。レオンはそれを理解していて、先に獲物を見付けることができている。
とは言え、ここまで近付くとさすがにガゼルの方もちゃんと目で捉えることができるから、身を隠して慎重にストーキングするわけだな。
肉食獣の狩りは、
『いかに獲物に気付かれずに近付くか?』
が成否を分けると言っても過言じゃないだろう。ここで失敗すると逃げられてしまって実際の狩りにすら至れないわけで。凛達もそれで狩りを失敗することはある。
もっとも、走や凱達はその点を逆に利用して獲物を誘導、待ち伏せして捕らえるということをよく行ってる。これは、群れが大きいからこそ有効なやり方でもある。<囮役>を立てても実際に獲物を捕らえる方が手薄にならないからな。
その点では凛達の群れの規模じゃ難しい部分もあるんだよな。
それでも、狩りの成功率は上がるというのもあってか、今回も凛達が二手に分かれたのを、上空のドローンがカメラで捉えていた。
さて、今日は上手くいくかな。
上手くいってほしいと、俺としては願わずにはいられない。




