凛編 その集団における正解
まあいずれにせよ、子供達をまだまだ一人前とは言い難い若い雌に任せて、凛達は狩りへと出掛けた。
今日のメンバーは、凛、侑、按、萌、彪、朗、朗のパートナーの雌、および他の群れを巣立って合流した二人。
皆、狩りに慣れた<手練れ>だ。特に凛は群れでは最年長であり、実質的な群れのボスだ。
ライオンの群れのボスである雄は基本的には狩りにはでないそうだが、レオンはボスが率先して狩りに出ることも多い。<狩りに出ないボス>もいるにせよ、むしろ少数派だろう。
地球人であるコーネリアス号の乗員らの遺伝子を受け継ぐここの獣人達は、自然発生した野生の獣と違って、微かではあるものの地球人の性質の影響を受けている可能性がある。だからこそ、ボスが自ら狩りを行うことでその力を誇示し、仲間の信頼を得るという在り方が発現するのかもしれない。
もちろん地球人にも、
『指揮官は後方でどんと構えているのが本来の在り方だ』
と考えるのはいて、その通りにする場合もあるが、やはり実際に能力を目の前で見せてもらった方が納得できる人間も多いから、そちらを選択する<ボス>も少なくないんだよな。
『どちらが正解か』
ということじゃない。結果として上手くいけばそれが、
<その集団における正解>
だったというだけでしかない。そして凛の群れの場合は、彼女が自ら先頭に立って狩りを行うことで結束力が保たれているということだ。
これは、走や凱の群れも同じ。まあ、走と凱の場合は、元々は、
<余所者の若い雄>
だったことから余計に力を示す必要があったんだろうけどな。自分達が群れを率いるボスとしての力を持っているんだと証明したからこそ今があるんだと思う。
対して凛の場合は、彼女自身は『群れを作る』つもりはなかったようだ。あくまでも侑と番って子を生して、自分の身内だけで生きていけたらそれでよかったんだろう。これは、最初は新と番って二人だけで満たされていたことがあるのかもしれない。ただ、彼女はその上で<子>を望むようになり、子を望まなかった新との間に溝が生じてしまっただけで。つまり、
『凛と新の間では、それぞれの選択そのものが二人の関係を維持する上では<不正解>だった』
ということだな。
ただその事例だと、どちらを選択してもどちらかが一方的に我慢を強いられることになったから、結局はいつか破綻していた可能性も高い。だから最初から上手くいかない相手だったってことだ。どんなに愛し合っていてもな。
凛と新の間には、<正解>がなかったんだよ。




