凛編 狩りの時間
夕暮れ。それまではだらだらごろごろしていただけに見えていた凛達が、強い視線を草原へと向ける。
と同時に、ピリッとした空気が画面越しにも伝わってくるかのようだった。
<狩りの時間>だ。
四足動物と違い、直立歩行による視点の高さを活かしてはるか遠くの獲物の様子を捉える。それこそ、地平線の向こうギリギリのそれまでレオンには見えているようだ。
視力もいいんだよ。しかも、夕暮れで明るさも下がっているにも拘わらず、しっかりと目で確認できているらしい。その分、嗅覚や聴力はライオンやトラには一歩及ばないと推測されているが、それも人間(地球人)ほどは弱くもないことで、そこまで大きな弱点というわけでもない。加えて、高い知能がそこを補ってくれている感じか。
そうして、凛達は今日の獲物の目星をつけて、出発する。
凛達が狩りに出ている間に子供達の世話をするのは、狩りでは十分な力を発揮できない者の役割だ。
多くの場合、それは年老いた雌が負うことになるが、凛達の群れでは凛自身が最も高齢の雌ではあるが、今のところはまだ率先して狩りに出ることから、若い雌が交代でその役目を担ってた。
若い雌と言うか、年長の子供達だな。
人間の場合、子供に子供の面倒を見させるのは大人としての責任放棄でしかないにせよ、たとえ子供でも、乳離が済んでいればそれこそ自力で生きていける野生の獣の場合は、そこまで神経質にならなくてもいいのかもしれない。
特に、凛や走や凱の群れだと、ロボット達が守ってくれるからな。外敵が近付いてこないようにしてくれてるし、万が一、子供が勝手に出歩いても連れ戻してくれるし。
だが、野生の場合は、勝手に出歩いて命を落とす幼体も多い一方で、中には生き延びて成体になってみせるのも稀にいるようだ。
素戔嗚なんかはそれこそそのタイプだろう。幼かった時からすでに成体でも手を焼く強さを発揮していたのもあって。
もっとも、野生の生き物は、人間の赤ん坊の力でも容易く捻り潰されるような脆弱な種でもしっかりと生きていたりするんだから、そこまで不思議でもないのかもしれない。
それに、爬虫類なんかはそれこそ生みっぱなしで育てないのが多いわけで、それでも生き延びる幼体がいて、ゆえに種が維持されていると。
やはり人間(地球人)が弱すぎるんだな。子供だけじゃなく、大人でさえ、裸で自然の中に放り出されればほとんどが死ぬしかないなんて、あまりにも特殊すぎる。
だからこそ、人間の子供の育て方を野生の獣に当てはめるのは意味がないんだろう。




