凛編 朋群人の能力
ケインは、生きた獲物をそのまま食うことができない。ただ、すでに死んでいるものを生のままで食うことはできる。
まあでもこれは、いわゆる＜日本人＞が魚の活け造りを食べられるのと似たようなものと考えればそれほど変でもないんだろう。
対してイザベラやキャサリンは、自身が捕らえた獲物をその場で生きたまま食うこともできる。と言うか、する。
むしろそれでないと食った気がしないようだ。調理されたものも食うが、その後でまた獲物を自ら捕らえて食ったりもするしな。物足りないみたいなんだよ。
これについてイザベラやキャサリンの口からは直接聞けてないが。
まあそれについては当然か。なにしろ見た目は母親のビアンカより若く見えるだけで体格はほとんど変わらないと言っても、実年齢はまだ五歳にもなっていないんだからな。
地球人の五歳でも、さすがに理路整然と説明ができるわけじゃないし。
ちなみに、言葉自体、ケインがようやくたどたどしい感じで多少は話してくれるだけで、イザベラとキャサリンについては基本的に片言をたまに口するにとどまってる。
そもそもの言語能力が地球人に比べるとやや未発達なようだ。これについては非常に高い身体能力を確実に活かすためにそちらに脳のリソースが割かれていることもあるらしい。
だから知能そのものが低いというわけでもないんだよ。＜四歳児＞ないし＜五歳児＞として考えればむしろ高いくらいだと思う。あくまで言語についてはって感じだ。
対して凛達は、＜人間＞として考えれば地球人の十歳くらいの知能にとどまってるだろう。しかしこれも、野生で生きていくにはその程度で十分かつ身体能力を十全に活かすためにそちらにリソースを割り振っているからだと思われる。
この辺は、光や灯を見ていれば実感できるな。パパニアンである光は、野生のパパニアンの身体能力に比べれば控えめだし、灯も、野生のアクシーズに比べれば同じく控えめなスペックにとどまってるわけで。その分、知能はもちろん高い。地球人と比べてもまったく遜色ない。
だから、それぞれの生き方に合った能力が発揮できてれば問題ないと俺は思ってる。知能が高い低い、言語能力が高い低い、身体能力が高い低いは、単純に優劣には結びつかないさ。
まあ、地球人社会の場合は、知能の高い低いが生き易さにまで直結するような仕組みになってしまってたりするけどな。
そこも、朋群人社会ではちゃんと考えなきゃと思ってる。
それだけじゃ朋群人の能力は計れないわけで。
