凛編 社会の安定を図るのを目的とした概念
しかし、それで言うと、実は凛の群れはそこまで、
『生きる力が強い』
とは言い難いだろう。決して弱いわけではないものの、レオンの群れとして見れば平均以下だと思う。凛も侑も、走や凱に比べれば明らかに<格下>だしな。
これは決して馬鹿にしてるわけじゃない。あくまで冷静に客観的に分析するとそうなるというだけなんだ。
『凛は兄達に比べて劣っている』
と言いたいわけでもない。俺にとっては全員、可愛い子供達なんだから。
しかし同時に、親だからこそそれぞれをよく知ってるわけで。
今でこそ立派に自立して<大人>として子供を育てたりもしてる光と灯だが、小さい頃には<おもらし>をしてしまって困った表情をしてたことなんかもあったよ。
『自分じゃどうしていいか分からない』
からだろうな。決定的に経験値が足りないんだから当たり前だろう。そこで、
『なんでもっと早く教えない!?』
『なんでもっと早くトイレに行かない!?』
とか怒鳴ったところで、ただ怯えさせるだけだと実感してる。
人間は失敗する。ましてや未熟な子供の内はそれこそ失敗を重ねて経験を積んでいくことになるはずだ。
そして重ねた失敗も経験として吸収して、光も灯も一人前の大人になってくれた。
その事実を認めればこそ、子供達それぞれが持つ能力についても、真っ当に評価できるようになると思う。
過大評価も過小評価もしない。
ただただ正当に評するだけだ。その上で、凛の群れはロボットにも守られているから、条件が同じ走や凱の群れを除けば、少なくとも他のレオンの群れじゃまったく太刀打ちできない状態ではある。
これを『狡い』と言うのもいるだろうが、<平等>なんてのも所詮は人間(地球人)が自分達自身を守るために、
<社会の安定を図るのを目的とした概念>
として作り上げたものでしかないからな。
人間(地球人)は、
<他者を妬む生き物>
でもある。野生の獣はあくまで<自身の目先の利>を求めて獲物やパートナーを奪い合ったりもするが、別に自分とはまったく関わりのない見ず知らずの相手までを妬んだりすることはない。
当然か。そういうのがいるというのを知る手立てがないからな。
だが、人間(地球人)って奴は、それができてしまう。普通に生きてるだけならその存在を知ることさえなかった相手についての情報まで手に入れられてしまって、その相手が自分より恵まれていると知れば、妬んでしまったりもするんだ。
で、その妬みを拗らせて<悪意>を生じさせ、厄介事を引き起こしたりすると。




