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凛編 群れ

(かい)は野生に暮らすレオンだが、俺の子供でもあるからか、


<大切な相手を弔うという概念>


を持ち合わせているようだ。


しかし、同じく俺の子供で、ある程度までは俺の元で育ったはずの(そう)は、ずっと割り切った反応を見せる。


彼のパートナーの一人である(たく)が亡くなった時もそうだった。分かりやすく悲しみを表現する(かい)とは対照的に、(そう)は平然としているようにも見えた。その姿は<冷淡>と言ってもいいくらいのものだったと思う。


だがそれでいて、ドーベルマンMPMらが(たく)の遺体を収容した時にはただそれを険しい表情で見守るだけで、邪魔をするわけでもなかったんだ。だから彼には分かっていたのかもしれない。俺達が、(たく)を弔うためにドーベルマンMPMらに収容させたことが。


それこそが彼の<悼み方>だったんじゃないかと今でも思う。まあ、単なる<親の贔屓目>の可能性ももちろんあるものの、(そう)が他の野生のレオンとは違っているのもまぎれもない事実だからな。


悼み方にもいろいろあるということだ。


地球人社会だとえてして自分が思う悼み方をしない他人のことを『薄情だ』『常識がない』などと()(ざま)に言ったりもするが、そんなものは、


<礼儀礼節をわきまえた大人>


がすることじゃないと俺は思うんだよ。


だから、(かい)のような悲しみ方をしないからといって(そう)は薄情でも冷酷でもないと俺は思ってる。


何しろ彼は、(かい)(ほん)(まい)の死を悲しみ遠吠えを上げても、それを諫めたりはしないからな。本当に(ほん)(たく)(まい)の死を何とも思っていないのなら、(かい)のそれはただ迷惑なだけだろうし、やめさせることだってできたはずだ。


けれど、彼はそうしなかった。悲しみを隠そうとしない(かい)を好きにさせてただけなんだ。


そんな兄二人を間近で見つつ自らも群れを実質的に率いている(りん)も、一般的なレオンの群れとは毛色の違うそれを作り上げていた。


性分化疾患により雄でも雌でもない状態で、ロボットであるドーベルマンDK-a()号機をパートナーのようにして共に暮らす(あん)


母親の兄である(そう)の息子、つまり<従兄>と(つが)った(ほう)


一度は巣立って群れを離れたにも拘らずパートナーの雌を連れて戻ってきて、再び群れに合流した(ろう)


そんな子供達三人が中心となった群れは、他の群れから巣立って合流した者達も合わせて十人余りの規模となった。レオンの群れとしてはやや小さ目ながらも、仲が良く結束力の強い群れになったと思う。


その中で、(りん)は幸せに暮らしているんだ。


少なくとも俺にはそう見えていた。



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