表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2267/2990

凛編 全知を目指す

そうだな。<全知>なんてもんを持つ人間は存在しないし、そもそも<生物>という存在自体が、


『その構造として全知にはなり得ない』


というのは確かなんだろう。全知になるには物理的な限界が低すぎるんだ。生物は。


地球人社会では、超AIの開発によってその事実を思い知らされてきたんだと。現在の地球人の活動範囲内で入手できるあらゆる物質を使ってAIの性能向上を目指してきた。それにより現在のAIは人間をはるかに超越した思考能力と記憶能力を獲得したんだ。しかしいまだに、地球人社会最高の性能を誇るAIでさえ、全知には程遠いそうだ。


それは俺も実感してる。エレクシア達メイトギアはまあ搭載できるAIの記憶容量の物理的限界が厳しいから無理なのは当然としても、光莉(ひかり)号のそれは、性能を十全に発揮するために必要な周辺機器を含めれば小さめの一軒家ほどの大きさがあるんだ。


なのに、地球人社会で用いられていた技術のすべてのデータを細大漏らさず持ってるわけじゃない。これだけでももう全知じゃないことが分かる。


まあ、もしそうだったとしても、再現するのに必要な材料がここじゃ手に入らない以上、恒星間航行技術(ハイパードライブ)を修理することはできないけどな。


つまり、<全能>でもない。


そう言えば、


『フィクションにおける天才キャラは、実際には作者以上の能力は持っていない』


みたいなこともよく言われてたのを覚えてる。


『天才キャラを天才として描写するために、途轍もない難問を解いてみせたみたいな説明をされるが、実際にその難問を解いた詳細な手順は描写されない。なぜなら作者自身がそれを理解できないから』


というのと同様に、


『神は全知全能である』


みたいに考える人間も、


『じゃあ、その神はどんな風に全知全能なんだ?』


と問われても、具体的に説明はできないということだな。それがもしできるなら、そいつこそが全知全能なわけで。


全知全能が再現できない以上、<全知全能の神>なんてものはいないのと同じだし、いなくても別に人間社会は成立するわけだ。


たとえもしそんなものがいたとしても、おそらく人間には観測できないだろうさ。完全に人間の認知能力の外に存在するだろうし。


<人間が想像する神>は、所詮、それを想像してる人間の能力を超えるものじゃないってことだろうな。


神を信じるのはいい。それを心の支えにするのも好きにすればいいと俺は思う。思うが、自分が頭に思い描いている<神の姿>は、結局のところ自分自身の投影でしかないってのをわきまえるべきだと俺は思う。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ