表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2264/2989

凛編 遠吠え

(りん)は、レオンである。


レオンでありながら、実の兄でもあるパパニアンの(あらた)と結ばれて、俺達の集落で一緒に暮らしていた。いたんだが、やがて<考え方の違い>から二人の間に溝ができていき、そして破綻。彼女は(あらた)の下を去って、レオン本来の生息域である草原へと帰っていった。


(あらた)との子供を欲した(りん)と、子供にはまったく拘らなかった(あらた)とでは、歩む道が違っていたんだ。


こうして、(そう)(かい)達とはコーネリアス号を挟んで反対側に縄張りを持った(りん)は、かつては(そう)(かい)の群れの一員だった(ゆう)と出逢い、(あん)(ほう)(ろう)という三人の子を迎え、群れを作った。


今ではその(ほう)は、(そう)(しゃく)の息子である(ひょう)(つが)って子を生し、(ろう)は、一度は巣立ったもののパートナーを連れて群れに戻り合流、(ゆう)の次のボス候補として頼もしい姿を見せている。


一方で、(りん)(ゆう)の長子である(あん)は、<性分化疾患>と思しき先天的な特徴を持ったことで『雌でも雄でもない』状態なこともあってか、レオンのパートナーは持たず、ドーベルマンDK-a()号機を実質的なパートナーのようにして穏やかな日々を過ごしていた。


母親であり、群れの<実質的なボス>である(りん)が<普通じゃない生き方>をしてきたからか、なかなかにいろいろありつつも、群れ自体はおおむね安泰だと言えるだろうな。


それでも、生きている以上は『まったく何も起こらない』ということはなく、(りん)の群れそのものじゃないが、お隣さんである(そう)(かい)の群れにおいて、(かい)の三人目のパートナーである(まい)が、その生涯を閉じた。


いくら血の繋がった兄妹であっても、巣立ってそれぞれ群れを作れば、


<生存競争を争うライバル>


となるはずの野生ではありつつ、


「……」


コーネリアス号の陰から、(りん)が様子を窺っていたんだ。


その視線の先で、


「うおおおお~、おおおお~ん……」


命を閉じた(まい)の体を抱いて、(かい)が悲し気に遠吠えを上げていた。だから(りん)も様子を見に来たんだろな。とは思うものの、必ずしもそれだけではないような印象もある。俺が彼女の実の父親だからそう感じてしまうだけという可能性もあるが、パートナーを喪って悲しむ兄を案じているような気もしてしまうんだよ。


それが事実かどうかは確かめようもないものの、(かい)の様子を窺っている(りん)もまた、すっかり<おばあちゃん>な姿になっていた。さすがに血の繋がった姉妹だけあって、(しん)の晩年によく似た感じになっている印象もある。


(そう)(かい)もまた、<おじいちゃん>になってるけどな。


<その時>は間違いなく迫ってきてるってことだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ