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閑話休題 家族

「ん……?」


家の外の気配に気付いて、(あかり)は目を覚ました。そして体を起こすと、娘の蒼穹(そら)がよく寝ているのを確かめてからそっと寝室を出ていった。


「おかえり♡」


笑顔で声を掛ける彼女に、


「ただいま」


「おう」


ルコアと未来(みらい)が改めて応える。


こうして、遊び疲れて眠ってしまっている蒼穹(そら)を除いた<家族>全員が揃った。


これが、(あかり)の家族だ。


ビアンカと共に『久利生(くりう)を共有』し、それぞれ子を授かって出来上がった家庭。


地球人社会においても、完全な自治を行っている惑星においては<一夫多妻>や<多夫多妻>を認めているところもあったりするが、彼女達のそれは、<制度>としてではなく、ただそれぞれの<気持ち>を尊重したからこそ成立したものだった。


今は亡き、<(きたる)>も含めて。


最初はそれこそ、未来(みらい)の実母である(きたる)久利生(くりう)から始まった家族ではあるものの、ビアンカと(あかり)も、


『ここではこれがむしろ自然』


として受け入れ、今の姿となった。


もちろん、


<地球人であるオリジナルのビアンカ・ラッセ>


の意識と記憶と感覚をそのまま受け継いでいたビアンカは、正直なところ、複雑な気持ちも抱えていた。久利生(くりう)への<想い>をずっと抱いてきた<地球人であるオリジナルのビアンカ・ラッセ>のそれも受け継いでいたからだ。


しかし、<アラニーズという人間>としてこの地に生を受けた自分自身を受け入れたこからこそ、


<地球人としての感覚>


に執着する必要がないことも理解していた彼女は、


(きたる)(あかり)とだったら」


と、あくまで相手が(きたる)(あかり)だというのが前提ではあるものの承諾。『久利生(くりう)を共有する』という形で家族となった。


そうしてビアンカは久利生(くりう)の子の黎明(れいあ)を生み、後に(あかり)久利生(くりう)との間に蒼穹(そら)を迎えたのである。


さらにその後、思いがけずビアンカが、『アラニーズとして』妊娠、と言うか<卵>を宿し、産み出された三つの卵からそれぞれケインとイザベラとキャサリンが誕生した。


しかしケインとイザベラとキャサリンについては、実は久利生(くりう)の子供ではなかった。


さりとて<他の男性の子供>というわけでもない。


と言うのも、不定形生物由来で生を受けたビアンカの体には、複数の遺伝子が存在し、さらには精細胞と卵細胞の両方が体内で作られて、それらが彼女も意図しない内に結合、<自家受精>という形で卵を形成したのである。


そしてこのことにより、<不定形生物由来の生物>がいかにして個体数を増やし、ここの自然に定着していったかの仮説が立てられるようになったという経緯があったのだった。



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