閑話休題 ルコアの日常 その4
こうして身支度を整えると、次は<朝食づくり>だ。
かつては、<姉>のような<母親>のような存在だったビアンカや、人間のサポートを主な役目とする<アリスシリーズというロボット>であるモニカやテレジアに用意してもらったりもしたものの、その際に手順を学んだことで今ではすっかり自分でもできるようになっていた。
朝は、<猪竜肉のベーコン>と<サラダ>だった。それだけだと割と普通に思えるだろうが、実は<量>が普通じゃなかった。知らない人間が見れば、
『大家族の朝食か?』
と思ってしまいそうな量を用意しているのだ。
それというのも、ルコアの体は今、<尾>の先まで含めると十メートル以上の大きさであり、その体を維持するためには、標準的な地球人女性十人分ほどのカロリーが必要になってくるのである。単純な質量もそうだが、生身の地球人では決して実現できないパフォーマンスを発揮する肉体には欠かせないというわけだ。
むしろこれでも、『太らないように』控えめにしているくらいだった。
そんな朝食を、ルコアは一人でとる。
実は最近までビアンカと一緒の家に住み、食事なども一緒にしてたのが、新しく<家>を用意してもらうことで<一人暮らし>を始めたのだ。これは、誰かに促されたのではなく、彼女自身が、
『いつまでも子供ではいられない』
と考えて自ら望んでそうした結果だった。むしろビアンカの方が、
「別に一緒でもいいんじゃないかな」
と口にしたくらいである。
家は、ドライツェンシリーズのハートマンおよびグレイが率いるドーベルマンMPMならびにホビットMk-Ⅱらが建築してくれた。
F-1(ファクトリー01)やF-2(ファクトリー02)で製造された部材を組み上げ、わずか一週間で完成したそれではあるものの、内装などは極めてシンプルに作られているものの、そこはルコア自身がこれから自分好みに仕上げていけばいいということで敢えてそうされたものだった。
実際、壁紙は彼女自身が選んで、ビアンカやモニカと共に貼った、淡いピンクのそれになっている。今の気分はそうだということだ。他にも、動物をモチーフにした小物類が、数こそはまだ少ないもののレイアウトされていたりも。
まさしく、
<これから自分色に染め上げていく途上の部屋>
ということだ。




