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ホビットMk-Ⅱ編 人間が敵として

野生の獣でも、敢えて人間を狙うのは確かにいたりするだろう。


だがそれは、


『あくまで<餌>として』


という意味合いがほとんどのはずだ。人間が持つ<悪意>のようなニュアンスで人間を狙うような野生の獣は、いないこともないのかもしれないが、やっぱり例外的な存在だろうな。


「そうだね。人間から危害を加えられたことで<敵>として認識し、ゆえに攻撃を加えてくる野生動物もいるけれど、それは<悪意>とは違うだろう。それを悪意と称するのなら、人間がえてして是としたがる<復讐>や<報復>も<悪>でなければおかしい」


と、レックスも言う。しかし同時に、


「その一方で、<悪意>と捉えるしかないような非合理的な振る舞いをする野生の獣も確かにいないこともないんだよ。人間を襲うのはリスクが高いと分かっているはずにも拘わらず、意図的に人間を狙う事例も確認はされている」


とも。


「ただそれについても、<原因>となる要素が確認されていないだけで、もしかしたら切っ掛けそのものは人間の側にあった可能性も否定できないけどね」


って注釈付きだが。


人間ってのはなまじ知能が高いだけあって、自身に降りかかった理不尽な出来事について<超解釈>を加えてとんでもない形で<復讐>や<報復>を行おうとする輩もいたりする。


<悪意>ってのは、そういうものである可能性もあるよな。


自分が虐げられてきたことについて、


『社会が悪い』


『こんな社会を作った奴が悪い』


『こんな社会をそのままにしてる奴が悪い』


的な超解釈によって、自分とは何の関わりもない相手に対して危害を加えようとするのが<通り魔>だったりするだろうしな。


通り魔本人にとっては<そうせずにいられない理由>があるんだとしても、それをまったく無関係な人間に向けるのは<悪意>と称するしかない理不尽さなわけで。


しかしだからこそ、


<他者を妬まなければならない理由>


<他者に対して攻撃的にならなければいけない理由>


を作らないようにするのが重要だと改めて感じるよ。


油断してれば俺の家族さえ<餌>にしようとする野生の猛獣が当たり前にうろついてるここで生きているからこそ、そういう危険に加えて、


<人間が敵として襲ってくる原因>


なんてものを作るのがいかに愚かか、思い知らされる。


『理不尽に奪われた者は、虐げられた者は、それを恨みに思う』


とか、当たり前すぎるくらいに当たり前のことじゃないか。だったら自らそんな原因を作らないようにするのも、当たり前だと思うんだよな。



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