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ホビットMk-Ⅱ編 人間として

『軍人としてのスキルを備えたビアンカが武器を手にして戦えば、おそらく(ばん)は敵じゃない』


武器を使うことを地球人はついつい<卑怯>だと捉えてしまうことが多いだろうが、そんなものは地球人ならではの<傲慢さ>でしかないだろう。


『武器を使う』


のは、人間以外の動物でも普通にやってることだ。爪や牙といった武器をな。


人間の場合はそれを<後付け>で<オプション>として用意できるというだけでしかない。そんなオプションを使えること自体が、


<人間の能力>


なんだ。


<人間という種が持つ能力>


なんだよ。だから決して卑怯でもなければ恥じるようなことでもない。<そういうもの>ってだけだ。


実際、(ばん)の命を終わらせた、


(ばん)の子であるヒト蜘蛛(アラクネ)


は、ヒト蜘蛛(アラクネ)としては非常に珍しく、


<武器を使う個体>


だった。尖らせた木の枝をまるで剣や槍のように使って、<老獪なベテラン>であった(ばん)を倒し、そしてその縄張りを奪ったんだ。<世代交代>としてな。


ヒト蜘蛛(アラクネ)という種は、自然には発生しなかったかもしれないが、すでにここ<朋群(ほうむ)>では、野生動物の一種として完全に定着している。多少の増減はありつつも、全体としては概ね一定の個体数を維持しているんだ。


だからこうして、健全な形での世代交代は必要になってくる。


(ばん)の子>は、自身の肉体に元々備わっているものではなくても、<自身の知能によって編み出した武器>を用いて、父親を超えてみせた。俺はそれを認めたいと思う。


そしてその(ばん)の子も、雌との間に子を生したようだ。いずれはその子達が彼の命を脅かすことがあるとしても、それは自らが父親を倒して世代交代を果たしたのと同じなわけで、別に問題になるようなものでもない。


<子殺し>も<親殺し>も、あくまでも自然の摂理なんだ。


だから、(ばん)を殺した彼のことも、責めるつもりは毛頭ない。


そんな<野生の獣>そのもののヒト蜘蛛(アラクネ)とほとんど同じ姿を持ちながらもあくまでも<人間>であるアラニーズのキャサリンは、ヒト蜘蛛(アラクネ)に近い野生の獣のような生き方を選びつつも、やはり人間だった。


人間としてビクキアテグ村に<自宅>を持ち、その自宅を拠点として草原に出て狩りをして暮らしている。


その彼女がパートナーのように行動を共にしているのが、


<ドーベルマンMPM十六号機>


だった。十六号機は、元々は、


<ドーベルマンDK-aの量産機>


として作られたドーベルマンMPMの一機であり、<個性>など持たせていないにも拘らず、キャサリンは他でもない十六号機を選んだんだ。



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