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ホビットMk-Ⅱ編 いい友人

野生の生き物であっても、実は必ずしも子を残せるわけじゃないという事実は、紛れもなくある。だったら、人間でもそれがあっても何の不思議もないだろう?


『人間と人間以外の動物は違う!』


と強弁する奴だって、まさかそういう形で<違い>を説いたりはしないよな? なにしろ、


『結婚して子供を作るべき』


みたいな理屈は、


<動物としての本能>


をその根拠にしてるだろうし。『人間と人間以外の動物は違う』と言うのなら、<動物としての本能>を根拠にするのは筋違いだしな。


だからこそ、(あん)のように、


<子を生せない者>


だけじゃなく、


<自らの意思で子を生さない者>


についても、ここではとやかく言うようなことはなしにしたいと思う。最初から、


<子を生して当然という感覚>


を作らなければいいことだし。


俺がそう思っているからこそ、子を生せる可能性のない相手と共に暮らす(あん)が幸せそうに見えるんだろうし。


これが、


『結婚して子供を作るのが当然』


なんて考えで見ていたら、


<ただの不幸>


にしか見えないかもしれない。そして『祖父として』気を揉んでたかもな。


しかもそんな状態を『不幸だ』と感じていたかもしれない。


そういう意味じゃ、


『幸せも不幸せも気の持ちよう』


と言える気もする。


俺としちゃわざわざそんな形で不幸を感じたくもないね。それじゃ自分で不幸を作り出してるようなものだろ。


だが幸いにも俺はそうじゃない。『結婚して子供を作るのが当然』なんて感覚はそもそも持ち合わせていない。結果として<子だくさん>どころじゃないほどの多くの子供達を迎えることにはなったものの、それはあくまで、(ひそか)に、(じん)に、(ふく)に、(よう)に、そしてシモーヌに出逢えたからだ、そうじゃなければ俺はきっと、結婚さえしていないだろう。


妹一人救ってやれなかった自分みたいな人間が、パートナーを、ましてや子供を、幸せになんてしてやれるはずがないと思ってたしな。


だが、(ひそか)(じん)(ふく)(よう)も、そんな俺の事情なんかそれこそ『どこ吹く風』で俺を愛してくれたからこそ、俺も、


『細かい理屈はどうでもいい』


って思えるようになったんだと思う。そして(ひそか)達に変えられたからこそ、シモーヌとも愛し合うことができるようになった。出逢った順序が逆なら、きっとシモーヌとはパートナーになってなかっただろうな。


いくら透明な体を持っているとはいっても、そのメンタリティやものの考え方は地球人のそれであるシモーヌとはな、


シモーヌじゃ、俺を変えることはできなかったと思う。


<いい友人>


にはなれたかもしれないが。



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