ホビットMk-Ⅱ編 劇的な変化
「!」
ホビットMk-Ⅱが植物を解体して、自身のボディに備え付けられた<代用プラスチック製のサンプル保管用試験管型ケース>に封入していくのを<食事>だと解釈したらしいルカニディアの少女が、同じようにして植物をばらばらにちぎって口に運んだものの、すぐに『ペッ、ペッ』と吐き出した。
残念ながら彼女の口には合わなかったようだ。まあ元々、ルカニディアが主に餌にしてる植物じゃなかったしな。基本的には木の実や果実を好んで食べる。中には<悪食>とでもいうしかない形で、木の葉や皮を食べるのもいたりするが。
にも拘わらず彼女が葉っぱを口にしたのは、当然、ホビットMk-Ⅱの真似をしたんだろう。つまり、
<真似をしたいと思える相手>
だったということだ。彼女にとってはな。
単なる<好奇心を基にした興味>だったとしても、野生に生きる彼女がそれを示すというのは、人間の子供が示す好奇心よりもさらに<意味>があるだろうな。なにしろ余計な振る舞いをすると命を落とすことにさえ直結する世界で生きてるんだ。
それでもなおこれをする意味。
ただの人間でしかない俺には正確に推測することさえ叶わないものの、もしかしたら本当は大した意味なんてないのかもしれないものの、やっぱり何か特別なものをそこに感じてしまうよ。
などという俺の主観はさておいても、とにかくルカニディアの少女は、ホビットMk-Ⅱのすぐ近くにいることを選んだ。これはまぎれもなく、
<劇的な変化>
だ。
似たような事例としては、
『按とドーベルマンDK-a伍号機』
『キャサリンとドーベルマンMPM十六号機』
が挙げられるか。他にも、ニュアンスは違うようにも感じるが、
『蛮とドーベルマンMPM四十二号機』
もそうかもしれないな。
もっとも、按やキャサリンの場合は、そもそも生まれた時から身近にドーベルマンDK-aやドーベルマンMPMが傍にいたことであまり抵抗がなかったのが大きいだろう。
対して蛮の場合は、最初はドーベルマンMPM四十二号機を敵視し執拗に攻撃を加えようとしていたものが、いつしか諦めたように勝手にさせていただけって感じだろうか。
しかし、『本来はまったく接点のなかった状態からそうなった』という意味では、むしろ今回のケースに近いか?
とは言え、蛮の事例は、
『四十二号機が近くにいるのを放っておくようになった』
だけであって、そこに<親しみ>のようなものは見えなかったけどな。
が、ルカニディアの少女からは、確かに<興味以上のもの>を感じる。




