ホビットMk-Ⅱ編 我が子を見る感じ
そうして、調査をしながらルカニディアの観察を行い始めて一週間。
ホビットMk-Ⅱに興味を抱いているらしい<ルカニディアの少女>についても少し分かってきた。
彼女は、実年齢はおそらく六歳くらい。外見上の印象は、地球人で言うなら十代半ばか。この辺りもマンティアンと大きく違わない。そしてすでに巣立っていて、基本的には一人で暮らしている。
ルカニディアの生態としては、単独行動を好むようだ。他の個体と一緒にいるのは、おおむね繁殖の時だけだろう。マンティアンもそうだが、アクシーズのそれとも似ているな。
<ネコ>
を思いかべるとなんとなく生き方がイメージできるだろうか。群れることはあまり好まず、他のネコの助けを借りるでもなく自らの力で生きていく。
無闇に活動的な印象でもなくて、どちらかと言えば<怠惰>にも見える。特にルカニディアの場合は食事も菜食寄りの雑食だから、木の実や果実を採って食べるだけ。
だから、食性に起因する行動を除けば、マンティアンもルカニディアとよく似てるんだ。
しかもこのルカニディアの少女は明によく似てることもあって、俺としても、ついつい見入ってしまっていた。
なお、錬慈の方は、最近は萌花と遊ぶことが多くなって、常に俺にべったりという感じでもなくなったから、余計に集中できてしまうんだよな。
とは言え、今でも遊び疲れたりちょっと怖い思いをしたり不安になったりしたら俺のところに来て、膝に座ったりもする。寝る時も、俺の腹の上で寝たりもする。
もちろんシモーヌにも甘えるが、
『安心感を得る』
という意味じゃ俺を頼るようだ。まあ、確かに俺の方が体も大きいし、多少なりとも力もある。だから安心感はあるんだろう。
そんな錬慈に対して水帆は、どうも俺やシモーヌを<親>とは認識してないようだ。<仲間>だとは思ってくれてるようではありつつ、甘えてきたりはしない。どこまでもライラとオルトが彼女にとっては親なんだろう。
少し寂しい気もするが、まあ一緒に水中に入って触れ合うってことがなかなかできない以上は、仕方ない面もあるさ。だから、
<名義上の親>
でいいと思ってる。彼女がそれで満たされてるのならな。
その点、<ルカニディアの少女>については、それこそ、
『明に似ている気がする』
というだけで、実際に顔を合わすこともしてないんだから、<親>どころか<仲間>ですらないものの、不思議とそこは俺の脳内で勝手な補正が加えられてしまっているのかも。
『少なからず<我が子>を見る感じで見てしまってる』
というのが確かにある気がするんだよ。




