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ホビットMk-Ⅱ編 現実を補足強化する

『一部の地域で突然変異としてマンティアンが生まれ、ルカニディアと交配しつつ捕食することで駆逐していったんだとしても、それだけじゃマンティアンもルカニディアも複数の地域に存在することの説明にはならない』


その俺の疑問については、


「私もそれは疑問に感じてるよ。ただ、それについての確証を得るにはやはりまだまだ情報が足りない。足りないけれど、この地の<獣人>達の成り立ちそのものが地球における生物群の成り立ちとは大きく違っている事実を踏まえれば、いささか乱暴な推測は立てられてしまうかな。


マンティアンもルカニディアも、それぞれの地域で同時発生的に誕生したとね」


レックスがそう答える。


『それぞれの地域で同時発生的に誕生した』


確かに、地球の生物の分布をそういう形で説明するのは、


『あまりにも<ロマン主義>に過ぎる』


と言えるだろうな。


しかしここ<惑星朋群(ほうむ)>では、それが現実に有り得るんだ。例の<不定形生物>が決まった形を取るにしたって、あれが元々持っている<情報>が基になるし、<複数の生物のキメラ>である<獣人>にしても、その情報の組み合わせによって成立してるわけだから、<自然発生>に比べれば確実に同じモノや限りなく近いモノが発生する確率は高いわけで。


組み合わせのパターンそのものは途轍もない数であっても、実際に生物として成立する組み合わせ自体は限られてくるだろう。それは間違いなくある。


加えて、ここの生き物たちの多くがあの不定形生物を本能的に恐れている事実を見ても、<捕食>されてきたことは確かだろうしな。つまり、コーネリアス号の乗員達がシモーヌやビアンカや久利生(くりう)やシオやレックスやルイーゼのような形で再現されるのと同じで、他の地域でその姿を取ることだって有り得るさ。


でもまあ、それで言うと今度は、ヒト蜘蛛(アラクネ)が他の地域で見られないのが不思議になってくるものの、


『起こる可能性がある』


ということは、裏を返せば、


『起こらない可能性もある』


ということでもあるし。


まあそれについては、あれこれ考えても現にそうなってるんだから、


<そういうもの>


で受け止めるしかないだろうさ。こうやって考察するのは、あくまで現実を受け止めた上で『なぜそうなるのか?』を考えるためだし。


決して現実を否定するためじゃない。というかそれは<科学>じゃないよな。科学は現実を否定するためにあるんじゃない。現実を補足強化するためにあるんだと言ってもいいんだろうさ。



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