ホビットMk-Ⅱ編 仮説でさえない推測
まあ、敢えて<無謀な冒険>を行った者がいたことで、人間は様々な情報を得てきたというのはあるだろう。
<新しい大陸>
を発見できたのも、当時としてはそれなりに備えてのものだったかもしれないが、実際には無謀と言っても差し支えのない、<冒険>と称するにもおこがましい無茶だっただろうしな。
あと、<フグ>を食べるというのも、<安全な食べ方>が発見されるまでどれだけの犠牲を出してきたんだか。普通に考えたら、
『食べた奴が苦しんで死んだ』
ともなると、もう食べようとはしないと思うんだがなあ。
それでも人間は、フグを食べるために多くの犠牲を出しつつ<安全な食べ方>を求め続けた。
俺にはその気持ちは想像もつかないが、実際にそれを行った者達がいたからこそ、世界も広がったしフグも食べられるようになった。
というのも紛れもない事実だ。
だから、そういう<無謀>を、
『愚か』
と切り捨てるのも違うんだろうとは思うものの、
『結果良ければすべてよし』
で済ますつもりも俺はないんだ。避けられる危険はやっぱり避けていきたいと思う。
せっかく、<ロボット>という優れた道具を手に入れたんだからな。
だが、それがなかった頃の人間の中には、無謀なことをせずにいられないのもいたんだろうな。
マンティアンやルカニディアの中にも、そういう無謀なことを行った者はいたのかもしれない。しれないが、それが果たして功を奏したのか否かは、今の時点では判然としない。
ただ、マンティアンとルカニディアの生息域が綺麗に分かれているという事実を鑑みるに、そうなる原因があったのも事実なんだろうとは思う。
これについてレックスは、
「情報がまだまだ十分じゃないから<仮説>でさえない推測しか今は立てられないものの、どちらかが新天地を求めて危険な挑戦を行ったというよりは、元々はルカニディアの生息域だった場所でマンティアンとなる者が生まれ、ルカニディアとの交配を繰り返しつつ、マンティアンとしての形質を持つ者が増えていったんだろうね。
それと同時に、<共食い>の習性を持つマンティアンがルカニディアを駆逐していったのかもしれない。
こうして最終的に、マンティアンだけがその地に残ったと」
そう語ってくれた。それを聞いて俺は、
「しかしそれだと、分断された複数の地域にマンティアンもルカニディアも住んでる理由が分からないな」
疑問を口にする。
そうだ。一部の地域で突然変異としてマンティアンが生まれ、ルカニディアと交配しつつ捕食することで駆逐していったんだとしても、それだけじゃマンティアンもルカニディアも複数の地域に存在することの説明にはならないと感じるんだよ。




